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日本サッカーの現在と未来をつなぐ糸。 

text by

岩永修幸

岩永修幸Nobuyuki Iwanaga

PROFILE

posted2004/09/22 00:00

日本サッカーの現在と未来をつなぐ糸。<Number Web>

 「昨年は、'02年より確実に弱くなっていると考えていました。今もまだ弱いと思います。でも、違う強さが出始めていますよね」

 まだJリーグなど影も形もなかった頃から日本サッカーを追い続けている著者をして、「こんなに代表強化が難しい時期はない」と言わしめる、今の時代。選手が海外移籍して招集できなかったり、招集できてもコンディションが整っていなかったり……。そんな中で、日本代表は様々な表情を見せている。

 本書に綴られているのは、'02年ワールドカップ以降、日本のA代表とオリンピック代表がたどった変遷の様子だ。今年6月までのほとんどの試合をカバーしながら、2つの代表の姿が詳細に、わかりやすく描かれている。

 この2つの代表は、'06年ワールドカップで主力となるであろう集団である。「次のワールドカップを楽しむ材料を蓄えてもらいたい」という思いが、そこには込められている。

 2つの代表の成長過程を見つめるとき、著者がとりわけ注目しているのは、選手たちのサッカーに対する「意欲」の変化だ。

 「日本人というのは、ずっとそうなんですけど、とにかく教えられたことを一生懸命やろうとする。それ自体はいいんですが、何かが狂ったときにうまく修正できないし、本当に頑張らなきゃいけないところで力が発揮できない。教え込まれすぎた影響でしょうね」

 オリンピック代表に、典型的な例があった。

 「昨年のことです。CKは阿部勇樹が蹴ることになっていたんですが、彼がピッチからいなくなった後に、選手はベンチを見たんです。やっぱり、それじゃダメなんですね」

 代表クラスの選手でも、指示を仰ごうとする“癖”が残っている。それが現状だ。

 とはいえ、オリンピック代表にもA代表にも、現状を打破した瞬間は度々あった。前者は最終予選、後者は昨年のコンフェデレーションズ・カップなどで、トゥルシエ時代とは一味違った精神面の成長を垣間見せた。

 ただ、著者はなおも、より一層の意欲と、より素晴らしいプレーが欲しいという。

 そう言い続けるのは、なぜか。

 「日本中の皆が真似したいと思うようなサッカーをやってほしいから」

 代表チームは、その国のサッカーを映し出す鏡。その国の集大成である。しかし、それはそこで完結するものではない。映し出されたものは、それを見つめるその国の未来の担い手に還元されていくのだ。著者は、そのことを意識に留め、'06年代表予備軍を追った。

 「日本のサッカーはもっと良くならなきゃいけない。良くならないと、幸せになれない」

 日本サッカーの現在と未来をつなぐ糸を丁寧に紡ぎ出すその文章は、試合の内容や意義に加え、大会の運営形式がどうだったかということにまで触れている。

 「無関係じゃないですからね。運営次第でプレーに影響が出ることもありますから。オリンピック最終予選でUAEの監督は、あちらのホーム3試合目でもうお手上げでしたよ。2日に一度のペースで3試合を戦ったわけですから。なぜそんな日程だったのかというと、日本の力。Jの日程の都合なんですけど、日本は自分たちが決めた日程に合わせてちゃんと準備してきたから勝てた」

 ピッチを離れた部分も含めて“サッカー”なのだ。それらの重要性も教えてくれる本書は、プレー面で代表が歩むべき方向性の道標であると同時に、“サッカー”をより深く理解するための道標でもある。

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