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モウリーニョに見る「理論派」監督の宿命。 

text by

永井洋一

永井洋一Yoichi Nagai

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photograph byMichi Ishijima

posted2004/10/07 00:00

モウリーニョに見る「理論派」監督の宿命。<Number Web> photograph by Michi Ishijima

 プレミアシップ・チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督への風当たりが強くなっている。第6節終了時で4勝2分けの2位と結果は上々だが、試合内容がイングランドのファンにとっては堅実すぎてつまらないというのだ。

 モウリーニョは選手としてはまったくの無名。体育教師からボビー・ロブソンの通訳を経てアシスタントコーチとなり、指導者としての階段を駆け上がってきた。トップ選手としての経験がないモウリーニョにとって、プロ集団をまとめるには高度な戦術理論が必要だ。「違う国、違う文化、違うメンタリティーを持つ選手たちをまとめるには、ビッグ・タクティカル・カルチャーが必要」と自ら発言しているように、緻密な戦術理論がコレクティブなチームづくりの柱になっている。そして、その戦術論の核となるのが守備だ。11人全員が高い守備意識を維持することが、モウリーニョ理論の基本である。

 緻密な守備戦術は、モウリーニョのみならず、選手実績の乏しい指導者が成功するための必須条項である。古くはアリゴ・サッキから'94年W杯のブラジル代表監督パレイラ、そしてファンハール、この系譜の末端にはトゥルシエも入る。その緻密な守備理論は一応の成功をもたらすが、その先に必ず「勝ったけれども、つまらない」という批判が待ち受けている。凡人の知りえぬ理屈を越えた世界を選手として経験していない以上、それは彼ら「理論派」指導者の限界かもしれない。

 「つまらないという批判があるが、我々は決して引き分けを狙うようなサッカーをやっていない」

 「我々より良い成績を挙げているチームがいくつあるというのだ。それはアーセナルだけで、彼らがチームづくりにかけている時間は、私たちとは比べものにならないくらい長い」

 第6節のトッテナム・ホットスパー戦では、その批判を封じ込めるためか、早いタイミングでタテにパスを入れて勝負する姿勢を強く押し出した。ところが、試合はスパーズの健闘もあり、前節に続いて0―0の引き分け。「彼らはフットボールをせず、守ってばかりいた」と、スコアレスの原因を相手チームの姿勢に求めたモウリーニョだが、それは選手獲得にケタ違いの資金を投入したビッグクラブの指揮官の言うべきことではないはずだ。

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