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ドリブラーをいかに育て、活用するかという課題。 

text by

永井洋一

永井洋一Yoichi Nagai

PROFILE

posted2004/05/20 00:00

 プレミアリーグの優勝を決め、「シーズン無敗」の偉業に挑むアーセナルの強さは、「組織」の統制と選手の「個」の輝きが融合している点にある。とりわけ、右リュングベリ、左ピレスの両アタッキングMFのドリブルは、「組織」の中にほどよい「個」のアクセントを注入していた。

 一方、チェルシーにも右グリュンケア、左ダフという、ドリブルでアクセントがつけられる選手が存在した。しかしこのコンビは、リュングベリとピレスほどには多用されず、時としてベロン、ジェレミ、コール、パーカーなどに代わられた。彼らも才能のある選手ではあるが、強烈な「個」の集まりの中で、確固たるアクセントを加えるプレーはできなかった。このアタッキングMF2人の生かし方の違いが、今シーズンのプレミアを沸かせた2チームの明暗を分けた要素の一つだと思う。

 もっともリュングベリやピレスのように、流れの中で効果的にドリブルを使うことは簡単ではない。ドリブルは常に「持ちすぎ」と表裏一体である。状況を見極めない猪突猛進のドリブルは滑稽なだけだ。展開の早さを追求するなら間違いなくパスワークに軍配があがる。要はプレーの流れの中にドリブルを絡めることによって、いかに状況に応じた効果的なリズムづくりができるか、である。

 U-23日本代表の攻撃には、田中達也が欠かせない。日本代表のハンガリー戦、攻撃の中に効果的なアクセントをつけていたのは交代で投入された本山雅志だった。殊勲のチェコ戦で際立っていたのは久保竜彦、玉田圭司のプレーだった。いずれも要所にドリブルを絡めたプレーがポイントになった。こうしたプレーのできる選手を絶え間なく生みだす環境づくりを進めたいものだ。

 しかし、育成年代の現場を見渡すと、危機感を感じる。ボールを受けたらすぐにサイドに振り、サイドの選手は間髪を入れずにアーリークロスを入れる、などというパターンサッカーが小学生にまでも浸透しているからだ。ストライカーキャンプに選抜された日の丸をつけるレベルの若手でさえも、ペナルティエリアの中でパスをつなぐことを考えている。そもそも、ドリブルかパスか、という選択の善し悪し以前に、自分の頭で考え、判断しない選手が量産されているように見えることが問題なのかもしれない。

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