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レースはスポーツ、必要なのは理論と練習。 

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大串信

大串信Makoto Ogushi

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photograph byMakoto Ogushi

posted2004/10/07 00:00

レースはスポーツ、必要なのは理論と練習。<Number Web> photograph by Makoto Ogushi

 根性まかせでひたすら競技に打ち込むのもひとつの道ではあるのだろうが、理論を学び頭で考え合理的な練習を重ねるのが近代スポーツにおける上達法の王道だ。特に、テクノロジーが深く関わる自動車レースでは理論を抜きに競技は成立しない。だが自動車レースの場合、理論はあくまでもレーシングカーの基盤であり、競技者はレーシングカーの性能に頼るだけの存在だと誤解されがちだ。

 根本の原因は、多くの方々が快適な乗用車に乗った経験を持ち、その延長で自動車レースを眺めるからなのだと思っている。だが、乗用車とレーシングカーは似て非なる乗り物であることを認識しないと自動車レースを本当に理解することはできない。

 乗る人間を選ばず操縦技術を可能な限り要求しないように設計されている乗用車に対し、競技の道具であるレーシングカーにはその種の配慮は一切ない。レーシングドライバーがサーキットをとんでもない速度で周回できるのは、速い自動車に乗っているからでも命知らずで度胸に溢れているからでもない。レーシングカーを速く走らせるためのテクニックを身につけているからなのだ。

 テクニックの有無で自動車がまったく違う動き方をするという事実は、なかなか体感できない。わたしは長年自動車レースを眺め、速く走るための理論をわかっているつもりだが、自分ではうまく走ることができない。これはとりもなおさず、レーシングカーを走らせるためには、理論を元に自らの肉体を訓練しテクニックを向上させる必要があるということの証明である。飛んでくるボールに適切な角度とタイミングとスピードでバットを当てなければホームランは打てないのだ。

 先日も、ニッサン・レーシングスクールに参加して目からウロコが落ちた。まず講師のレーシングドライバー田中哲也に、わたしの走り方の問題点を指摘された。走行中にわたしが何をやっているかを記録したデータを根拠にしているから説得力がある。その指摘を元にサーキットを走り込んで練習を重ねた。すると、確かにレーシングカーは望み通りの動き方を始め、ラップタイムも上がるのだ。コクピットで大汗をかきながら、「やっぱりこれはスポーツだぞ」と今さらながら納得したものだった。

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