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深紅の大旗は今年こそ
「白河の関」を越えるか。
~甲子園の注目株、菊池雄星~ 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2009/07/21 06:00

深紅の大旗は今年こそ「白河の関」を越えるか。~甲子園の注目株、菊池雄星~<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 '99年から今年までの甲子園を振り返ると、それまで春、夏とも優勝したことのない4道県から優勝校が輩出されている。'99年春の沖縄尚学、同年夏の桐生一(群馬)、'04年夏の駒大苫小牧(北海道)、そして'09年春の清峰(長崎)だ。

 それ以前の'89 ~'98年の10年間を見ると、'94年夏の佐賀商、'96年春の鹿児島実の2県のみ。さらに遡って'79 ~'88年の10年間では、'84年夏の取手二(茨城)、'86年夏の天理(奈良)の2県だけだ。野球技術が全国的に向上していると実感するのは、著者だけではないはずだ。

 残る処女地は東北6県、北陸4県、山陰2県など15県。この中で最も「甲子園制覇」に近いと言われ続けてきたのが東北勢だ。優勝を待望する人々が必ず口にするのが優勝旗の「白河の関(福島)越え」。駒大苫小牧の優勝により、白河の関どころか津軽海峡を越えてしまったわけだが、この台詞はたんなる合言葉、標語の類ではない。東北の全野球人の悲願がその6文字には込められている。

花巻東・菊池のポテンシャルは史上ナンバーワンか。

 今春のセンバツではその「白河の関越え」が目前まで迫っていた。準優勝を果たしたのは花巻東(岩手)。その原動力となったのがエース、菊池雄星の左腕だ。

 左腕投手では、'05年夏に甲子園を沸かせた大阪桐蔭の辻内崇伸(巨人)が史上ナンバーワンの速球投手として知られるが、制球力、変化球の精度、ディフェンス、投球フォームの完成度、さらにピッチングとは関係のない打撃、走塁まで見れば菊池が大きく上回る。

 センバツ後は春季東北地区大会の登板回避もあり、調子落ちを指摘する声が一部であった。それを封じたのが6月下旬の練習試合で、センバツ4強の報徳学園相手に6回、1安打10奪三振の快投を見せ、ストレートも最速148キロを記録。死角はなくなりつつある。

 勝負どころで上げる雄叫びが一流投手らしくないと言われ、センバツでは決勝を戦った今村猛(清峰)が、菊池の感情表現のたびに顔をしかめる場面もあった。だが、そういう指摘はピッチングとは関係のないものばかり。

 今村には力を温存する手抜き投法のときに腕を振れないという不満があるが、菊池は腕を振って緩急を操れる。こんな投手は菊池しかいない。東北勢による初の甲子園制覇は決して夢物語ではない。

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