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ノーヒッター八木智哉。悪環境が生んだ投球術。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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posted2006/05/08 00:00

 今年は新人がおもしろい。高卒で51年ぶりに開幕スタメンマスクをかぶった西武・炭谷銀仁朗。先発勝利ルーキー一番乗りを果たしたオリックス・平野佳寿。中継ぎでフル回転の巨人・福田聡志。そして、4月15日のソフトバンク戦で10回までノーヒットノーランというとんでもないピッチングをしたのは、日ハムの希望枠ルーキー、八木智哉である。

 0―0のまま10回で降板したため、勝ち星も記録も逃したが、新人の無安打無得点は、'87年の中日・近藤真一以来。延長まで投げて無安打無得点を達成したのは、'73年の阪神・江夏豊(11回)だけだから、球史に名を残す快投といっていい。

 最速141kmのボールでソフトバンク打線を抑えた八木の持ち味は、スライダーの出し入れ。楽天の野村克也監督は以前「低めのストライクゾーンからボールになる変化球がいい。ウチの一場も見習ってくれればな」と評したことがある。

 投球術を身につけたのは、今までの野球環境の乏しさからだった。山梨・日本航空高から創価大に進み、1年からエース。選手層の薄いチームでは連投が続くため、無駄な力を使わない投球を心がけた。また、ライバルのいない東京新大学リーグにあって、八木は外部の選手から貪欲に吸収しようとした。

 セレクションに出かけた本田鈴鹿では、高宮和也(現横浜)の腕の振りの鋭さに感じ入り、全日本大学選手権で出会った京産大の平野からは、練習での姿勢を学んだ。「あまり教えてくれる人がいなかったので、なんでも取り入れる知恵がついたんです」と八木は笑うが、その姿勢はプロ入り後も続く。

 名護キャンプでは、佐藤義則コーチを相手に居残りでクイックの投球練習をする八木の姿があった。大学通算35勝をあげたといっても、所詮はお山の大将。プロの厳しさに立ち向かうには、ただ投げ込んでいればいいというものではない。フォーム矯正を志願された佐藤コーチは「いろんなことに目配りができるから、ピッチングにも余裕がある」と言った。

 かつてパ・リーグは、日ハムの西崎幸広、近鉄の阿波野秀幸、西武の渡辺久信など若手本格派が注目されたことがあった。あれから20年。八木、平野、西武の涌井秀章といった若武者の登場で、再びパ・リーグの時代が花開こうとしている。

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