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東北が生んだ天才、小笠原が奮闘中!!
被災地の鹿島がJ再開に期するもの。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAkihiro Sugimoto/AFLO SPORT
posted2011/04/18 10:30
3月29日のチャリティーマッチで、“TEAM AS ONE”の一員として活躍した小笠原。本田との競り合いでは、お互い絶対に譲らないほどの激しいプレーを見せた
自ら支援物資を積み込みクルマで丸1日かけて被災地へ。
今さら言うまでもないが、小笠原の特徴のひとつに、フィジカルの強さ、体のバランスの良さがある。
ボールをキープしたら、相手に押されようが引っ張られようが簡単には倒されない。複数の選手に囲まれても、そこから冷静にパスを出せる。彼が簡単にボールを奪われてしまうような場面に出くわしたことはあまりない。冬の練習で培ってきたことが、小笠原満男というプレーヤーの土台になっているのだと言える。
気質も根っからの東北人。朴訥としていながらも、芯が強く、責任感が強い。鹿島が前人未到のリーグ3連覇を果たせたのも、この小笠原がリーダーとしてチームを牽引していったからである。
小笠原は震災の後、チームが一時解散になると居ても立ってもいられずに岩手に向かった。車に自ら用意した支援物資を積み込んで1日がかりで移動し、大船渡市や夫人の実家がある陸前高田市で避難所を慰問した。「行かないで後悔するのは嫌でしたから」と、彼は言った。自身のトレーニングを後回しにして、被災地の光景を目に焼き付けてきた。
チャリティーマッチでは疲れ切った身体を引きずってプレー。
大阪で行なわれた日本代表とJリーグ選抜のチャリティーマッチに小笠原はいた。
十分なトレーニングが積めていないことは一目で分かった。シーズン真っ只中の欧州組とのコンディションの差は歴然で、シーズン中には見られないような信じられないミスもあった。
しかし筆者は、ゴールを挙げたカズ以上に小笠原のプレーに心を打たれた。
体が重かろうが、ひたむきにボールを追い、守備をして味方につなげようとした。被災地のことを思い、決してあきらめようとはしなかった小笠原のプレーは、テレビを通じて試合を見た被災者の心に響いたに違いなかった。
試合後、彼は疲労の色をにじませながら言った。
「周りのみんなが助けてくれました。サッカーも助け合いなんだと思いました」