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カージナルスの勝ち頭、今期は立てるか檜舞台。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2005/09/29 00:00

カージナルスの勝ち頭、今期は立てるか檜舞台。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 「一度も頭をかすめたことがないといったら嘘になる。でも、それはいま考える必要のないこと。最優先されるのは、目の前の試合をいかにして勝つかということだ」

 勝利数を始め、投手成績の多くでベスト3に名を連ねるクリス・カーペンターは、サイ・ヤング賞に関する質問が飛ぶと、判で押したように答える。

 昨年の『カムバック賞』以外、賞やタイトルとは無縁の30歳は、マウンド上だけでなく、クラブハウスでも感情をのぞかせることはほとんどない。

 カットファストボールやスライダーなどを巧みに操り、打たせて取ることを基本にしながら、三振を取りにいくべきところではきっちり取る。そんな隙のない完成度の高い投球ぶりは、カーペンターという人物像そのものという感じがする。

 だが、そんな彼でもチラリとその人柄をのぞかせることがあった。オールスターゲーム前日、公開練習が行なわれた7月11日のことである。初めての出場で、しかも先発の大役を担うことになったカーペンターは、クラブハウスでメディアの輪がとけると、フィールドに出るために小走りに一塁ベンチに向かった。ところが、一歩足を踏み入れる前に突然立ち止まって球場全体をゆっくりと見渡したのだ。その目は子どものように澄み、キラキラと輝いていた。その様子を傍で見ていたこちらにも、彼の幸福感が伝わってくる気がした。

 カーペンターは'93年、ブルージェイズにドラフト1巡目(全体15人目)で指名されたときから将来を嘱望されていた。実際、4年目にはメジャー昇格を果たし、翌年にはブレーク、12勝をマークした。その後の成長を妨げたのは右肩痛だった。2度の手術で、2年間をほぼ棒に振った。甦ったのは昨年だが、9月に今度は右上腕を痛め、ポストシーズンには一度も登板できなかった。それだけにモチベーションは高い。だが、力むことはない。

 「ハードに練習して、ひとつひとつ勝利を積み上げるだけ」

 その向こうに見えるものが、オールスターに続く初体験となるワールドシリーズであり、サイ・ヤング賞であるということなのだろう。カーペンターにとって初もの尽くしとなるはずのシーズンは、まもなくクライマックスを迎える。

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