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インド巨大市場を狙え。MLBが目論む拡大路線。 

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津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

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posted2008/12/18 00:00

 1985年、スポーツイラストレイテッド誌で、ヒマラヤからやってきたシド・フィンチという投手が時速270kmの剛速球を武器にメッツのキャンプに参加したという特集が組まれた。4月1日号ということで、残念ながらこれはエイプリルフールの冗談だったが、時を経て、ヒマラヤの麓から本当に2人の投手がやってきた。

 パイレーツがインド出身のリンク・シン、ディネシュ・パテル両投手とマイナー契約を交わしたのだ。同国のTV番組の企画で3万人の中から選ばれた2人は今年5月に渡米。今年に入って野球を覚えたというが、半年間のトレーニングで145km以上の速球と変化球を習得し契約を勝ち取った。もちろんインド人選手はMLB史上初。米国メディアだけでなく、日本の一般紙やワイドショーにまで取り上げられた。

 話題性が先行しているが、パイレーツのハンティントンGMが「未開拓の市場への期待も大きい」と話す通り、そこには頭打ちの北米市場から新規マーケットに活路を見出したいMLBの思惑がある。昨年ヤンキースとマリナーズが中国人選手を獲得し、今年初めて中国本土でドジャースとパドレスがオープン戦を開催。今オフにはタイガースのグランダーソン外野手が現役として初めて親善大使として同国を訪問した。その先に人口13億人の巨大マーケットを睨んでいるからだ。

 同様にインド11億人が魅力的な市場であるのは間違いない。ロケッツの姚明が活躍したことで中国での中継視聴世帯数や公式グッズの売り上げが飛躍的に伸びたNBAも、実は一足先にインド戦略を打ち出している。30歳以下の人口が5億人に達するインドをマーケットとして成熟させられれば、総収入の約3分の1を占める放映料でも大幅な増収が見込めるだけに、MLBも手をこまねいてはいられない。

 偶然にもつい先日、2025年には世界情勢においてインドと中国がさらに成長しアメリカに並び立つ時代の到来を、米国の国家情報会議が予見した。むろん今回契約した2投手のメジャー昇格への道程は険しい。だが野球未開の地、インドや中国で競技人口が増加し続ければ、何十年か先にはメジャーでも米中印が三大勢力となる日がやって来るかもしれない。

リンク・シン
ディネシュ・パテル
姚明
ニューヨーク・メッツ
ピッツバーグ・パイレーツ
カーティス・グランダーソン

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