SCORE CARDBACK NUMBER

“薬物問題”を受けて、JRAの対応に思う。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph by

posted2006/11/09 00:00

 2年連続の3冠馬出現か、で盛り上がろうとした菊花賞だったが、筋書き通りに運ぶものではなかった。終わってみれば、8番人気の伏兵ソングオブウインドを、3000mの舞台で完璧に操った武幸四郎騎手の騎乗だけが格別に光っていた。ただ、競馬場のムードは祝福とは少し違う空気に包まれていて、管理する浅見秀一調教師がお立ち台に上がるのを渋ったほど。「ドラマを期待した多くのファンの皆さんには、申し訳ない。この馬を応援してくださったファンにはありがとう、と言います」と、複雑な表情を隠さなかったのが印象的だった。

 深夜の凱旋門賞中継に驚異的な視聴率20%超えを記録したほどの競馬ブーム再燃の兆しに水を差したのは、ディープインパクトの禁止薬物問題。というよりも、降ってわいたようなスキャンダルに誠実な対応ができないJRAの体質に、ファンが嫌な臭いを感じているからだと筆者は思っている。

 10月1日の凱旋門賞直後に採取されたディープインパクトの尿から、気管支拡張剤イプラトロピウムが検出されたことが明らかにされたのは19日。JRAは13日の時点で情報をつかんでいた(それでもこの時間のかかり方は異常だ)ようなのに、19日の記者会見の席上で「調査中」、「答える立場にない」を連発し、なぜ禁止薬物が検出される事態になったかを明らかにしようとしなかった。フランスの競馬統括機関「ギャロ」の通告を一方的に鵜呑みにして、日本競馬界の宝であるディープインパクトとその関係者の名誉を守ろうとする努力を行なった形跡さえ感じられないのが、ファンに「嫌な感じ」として伝わっているのがわからないらしい。それでいて馬券の売り上げだけは維持したいようで、「日本での出走には問題ない」と、そこだけは迅速に決定してしまう。まだ、フランス・ギャロは出走停止の期間や、それがあるのかどうかさえ発表していないのに、である。

 渦中の池江泰郎調教師は、身に覚えのない「汚点」(JRA理事長のコメント)の指摘に憔悴しきっているという。それでも「自信があるから黙っている」と、気丈さを失っていないのが名伯楽の心意気だ。飛ぶように走る、と称賛された不世出の名馬を、薬で汚されたものとして歴史に刻んでいいはずがない。

ページトップ