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ファンが期待する好カードの時代へ。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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posted2004/12/02 00:00

 3人も現役の世界チャンピオンを抱えながら、日本のボクシング界の現状は決して活況を呈しているとはいいがたい。「1人のスーパースターが出れば問題はいっぺんに解決する」(ある関係者)が、その1人の誕生が容易ではない。

 業界もようやく危機感を抱き始めた。一番のファンサービスは好カードの提供に限るというわけで、去る10月30日には世界ミニマム級戦と一緒に「3大世界挑戦者決定戦」という過去に例のない試みも実現した。出場の6選手全員が世界ランカーという豪華なサバイバル戦。関東初登場の神戸の星・長谷川穂積が試合巧者・鳥海純との激闘を制し、ベテラン西岡利晃は日本王者・中島吉謙の予想外の抵抗に遭いながら、我慢比べのような死闘を勝利し、5度目となる世界挑戦の資格を得た。17連勝不敗の新鋭・木村章司が沖縄のスラッガー、仲里繁の強打に耐えながらも決定打がなく引き分けに終わった。

 いずれも実力伯仲同士の対決、しかも勝てば世界挑戦権獲得とあって、どの試合も緊迫した中で白熱の攻防が続いた。

 これもきっかけになったか、今後も続々と好カードが続く。原稿の締め切りには間に合わなかったが、11月20日の嶋田雄大―長嶋健吾のライト級最強を決める一戦。年が明ければ日本フェザー級の新王者・榎洋之に14連続KOの関西のセンセーション、金井晶聡が挑む注目の一戦が控えている。さらには来年2月から始まるチャンピオンカーニバルにも魅力的なカードがあり、いずれも後楽園ホールは一杯になろう。願わくはこうした「好カードの連鎖」が一時的現象ではなく、当たり前のようになってほしいものだ。

 ファンが実現を期待する好カードとは、実力の拮抗した日本のトップ選手同士の対決であって、結果の分かり切った試合ではない。魅力的なカードは興行的な成功を約束するが、選手を擁するジムの会長たちが二の足を踏みたくなる気持ちも分かる。他の競技と比べても1つの敗北がもたらす代償があまりにも大きいからだ。しかし選手層の厚いアメリカでも、スター選手が負けても次の機会が与えられている。日本も、一度負けただけで終わりと考えないでほしいものだ。そのためには、リスクと同時に選手の意欲をかきたてる魅力的な報酬も用意しなくてはならないが……。

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