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野球選手への愛たっぷり15年分。 

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posted2005/01/20 00:00

野球選手への愛たっぷり15年分。<Number Web>

 「プロ野球選手ってこんなにすごいんだと。それを伝えたいというのが、コラムを始めたきっかけですね」

 本誌に1990年から連載されている野球コラムの中から94篇を掲載したのが、本書『プロ野球歳時記』だ。登場する選手は91人。清原和博、松坂大輔といった有名選手から、津田恒美、小野和義といった、懐かしい名前までが目次にはずらりと並ぶ。

 「書いたことで選手に文句を言われたこともありますよ。それでも、読者に何かを伝えられると思うから、書く。結果として、もっと選手と仲良くなることもある。いわば、選手との戦いみたいなもんですね」

 執筆のきっかけは、当時の本誌副編集長に、「書いてみないか」と声をかけられたことだった。少年時代から感じていた野球への興味は、少年マンガ誌の編集を通じてプロ野球選手への興味へと高じていた。様々な選手と時間を過ごし、多くのことを語り合った中から、コラムが生まれる。ドラフト前夜に選手と雑魚寝したこともあれば、優勝後に六本木で朝まで飲んだこともある。時には誰よりも真剣に、選手の悩みに耳を傾けた。

 「どっちかっていえば、不器用なんです。だから、選手との距離をうんと詰めちゃう。それで失敗することもあるんだけど、でも中に入っていかないと絶対に話は聞けないと思うんですね」

 一度書いたコラムは、あまり読み返すこともない。だが、忘れられない一話もある。

 佐藤二郎――。球界では知らぬ人はいないといわれた名物カメラマンだ。長嶋茂雄を立教大学時代から撮影し続け、1994年に亡くなった。そんな人物にスポットライトを当てられるのも、誰よりも身近で野球を見てきた筆者ならではだろう。

  「どうしても、亡くなった人の話はね。今でも思い出します」

  ひとつのものを長く書き続けることは、読者との年齢が離れていくことを意味する。その危機感はあるという。

 「書き始めた時と今と、同じスタンスでいなければいけない。読者は変わりますが、こっちが年を取ってはだめ。

 連載していて、自分が思い上がっていた時期もあったと感じますね。教えてやってるんだ、みたいなね。でも、今はそれはなくなった。初心に還ってきたというか。選手をすごいと思う皮膚感覚を、そのまま読者に伝えたい。そこですね」

 だからこそ、本書に「付録」をつけることにこだわった。各章の最後には、“最年長記録”や“大学別人脈”など、痒いところに手が届くようなデータがついている。連載を読んだ人もまた楽しめるように、との気遣いだ。

  2004年は、野球を巡って多くのできごとがあった。プロ野球初のストライキがあり、球団合併があり、新球団の誕生が決まった。

 「プロ野球はかくあるべきだ、と提言する人も確かに必要だと思う。でも、自分はその役割じゃないな、と。それよりも、野球をやっている人たちってこんなにいいやつらなんだよって。今だからこそ、それを伝えたいなと思いましたね。

  その意味でも、楽天ができることは楽しみだね。選手が仙台に行って、またいろいろなドラマが生まれる。わくわくしますよ」

  そう笑うまなざしは、どこまでも柔らかい。94篇、どのコラムからも、野球を愛する筆者の気持ちが伝わってくる――。そんな一冊である。

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