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不思議なことだらけ、イアン・ソープの薬物疑惑。  

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

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posted2007/04/19 00:00

 オーストラリアのメルボルンで開催されていた水泳の世界選手権で、思わぬ疑惑が持ち上がった。フランスのレキップ紙が「競泳男子自由形の元スーパースター、イアン・ソープ氏が、昨年5月に受けたドーピング検査で禁止薬物に異常な数値を示していた」と報道したのだ。同紙によると異常な数値を示したのは筋肉増強剤のテストステロンなど2種類の禁止薬物で、これを受けたオーストラリア反ドーピング機関(ASADA)は関係者に事情聴取をし、検体を分析したが「科学的根拠に欠ける」として調査を打ち切ったという。国際水泳連盟(FINA)は急きょ会見を開き、検査で異常を示した選手がいたことを認めた上で、検体から発見された物質を更に詳しく分析するためスポーツ仲裁裁判所に提訴したと発表。疑惑解明に全力を挙げる方針を示した。これに対し、ソープ氏もすぐに記者会見を開いて「決して不正な行為はしていない」と反論し、「これまでの検査結果のすべてを用意して検査機関に提供する。潔白が証明されることは間違いない」と全面対決の姿勢を打ち出した。

 科学的、医学的な証明を必要とするドーピング問題は、疑惑が解明されるまでに長い日数を要する。テストステロンなどのホルモンは生理的なきっかけで急激に高い数値を示す場合もあり、今の段階で薬物使用の有無を判断するのは難しいが、それ以前に、今回の疑惑には分からないことが多すぎる。ソープ氏はこれまで数え切れないほどドーピング検査を受けてきたのに、なぜ今回だけ「異常な数値」を示したのか。昨年5月の検査結果がなぜ今頃、しかも世界選手権の終盤に報道されたのか。検査結果が異常だったにもかかわらず、ASADAはなぜより詳細な分析をせず、公表もしなかったのか。ソープ氏が現役時代からFINAに対して協力的でなかったこともあり、FINAが意図的に情報をリークしたのではないかという憶測も現地では乱れ飛んだが、もちろん根拠はない。はっきりしていることはただ一つ、真実はどうあれ、ソープ氏のこれまでの名声に大きな傷がついたということだ。

 ソープ氏本人はもちろん、FINA、オーストラリア水連、ASADAの思惑が絡んだ今回の疑惑。真実が判明するまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。

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