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沖縄尚学エース東浜が持つ“野球頭脳”のよさ。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

PROFILE

posted2008/07/10 00:00

 春の選抜大会優勝投手と言えば、沖縄尚学の東浜巨である。進化がめざましい現代の高校生でもツーシームを自在に操れる選手は少ない。東浜は縦変化とシュート変化で落ちる2種類のツーシームをモノにし、これに縦、横2種類のスライダーとカーブを加え、ただでさえ際立っているMAX147キロのストレートをさらによく見せている。

 プロ野球に目を転じても、ストレートを前面に押し立てるピッチングスタイルは、藤川球児(阪神)など1イニング限定のリリーフ投手に限られ、球界を代表するダルビッシュ有(日本ハム)、涌井秀章(西武)、成瀬善久(ロッテ)などの先発投手は、緩急を自在に操ることによって打者を圧倒している。

 東浜の素晴らしさはピッチングだけではない。バント処理などで見せるフィールディングや、走者を塁上に置いたときのクイックでも超高校級の動きを見せる。選抜大会の聖光学院戦では1点リードの7回裏、無死一塁の場面で敢行されたバントを素早く処理して1−6−3の併殺を完成。さらに、けん制では一塁走者を2人殺すなど、守備名人ぶりを遺憾なく発揮した(3回の一塁走者は盗塁死と記録されたがけん制で誘い出されたもの)。

 こういうピッチングスタイルや動きのよさを可能にしているのが、野球頭脳のよさである。夏の大会を控えた5月下旬、東浜を取材して驚かされた。自らのピッチングの良さも悪さもすべて把握していたのだ。不満材料は内角に投げ切れない制球力の不安で、ヘッドアップなどを要因として挙げていた。

 反対に、長所は下半身で上半身をリードできるところ。その話になったとき、テークバックからリリースまでの体重移動で大切なのは「回転する動き」か「直線的な動き」か聞くと、東浜は「直線的な動き」と即答した。

 打者も投手も回転で打ち、回転で投げる風潮があり、直線的な動きが大切、という言葉は出しにくい。しかし、一瞬の躊躇もなく東浜は自分のピッチングで大切なのは股関節の移動で、体を早い段階で回す動きは良くないと言い切った。

 現在の野球界には、拠り所になるような技術の指標がない。そういう時代だからこそ自分なりのロジックが必要なのだが、東浜にはそれがはっきりあった。

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