SCORE CARDBACK NUMBER

氷上の芸術へのいざない。 

text by

Number編集部

Number編集部Sports Graphic Number

PROFILE

posted2005/02/17 00:00

氷上の芸術へのいざない。<Number Web>

 「私自身はボール競技が好きで、昔は採点競技は好きじゃなかったのよ。白黒はっきりしない気がして」

 こう笑う著者の梅田香子さんは、シカゴ在住のスポーツジャーナリスト。長年、MLB、NBAなどを中心に取材活動を行ない、著作は20冊ほどに及ぶ。今回、初めてスケートという新しい題材に挑んだのは、現在9歳になる長女がきっかけだった。

 「アメリカではフィギュアスケートは4大スポーツと並ぶ人気競技で、シカゴに住んでいたら、日本の子供がピアノを習うのと同じ感覚で女の子はスケートをはじめるの。家から車で30分以内にリンクが7つもあるし、うちの娘も5歳から習い出しました」

 自宅から近いという理由で選んだが、そのリンクでは五輪金メダリストのオレグ・ワシリエフ氏や、世界選手権銀メダリストのデビッド・サンティー氏が指導にあたっていた。さらに、ロシアの新星ペアとして期待されるタチアナ・トトミアニーナ&マキシム・マリニン組、昨夏からは村主章枝も練習の拠点を置くようになった。

 「彼らの日常の練習はものすごいハードだけど、採点やライバルがどうということよりも、自分自身が会心の演技をすることに重点を置いているのがすごく新鮮だった。フィギュアは映画や演劇と同じように見ていて楽しくて、その上で勝敗という付加価値がつく

―― 子供の競技会はバレエやピアノの発表会と同じようなものかもしれないけど、そこに勝ち負けの要素がつくと、親としてはどうしても興奮しちゃうもので……」

 こうして、どんどんフィギュアスケートの魔力に「はまった」梅田さんのもとに、「自分もスポーツライターになりたい」と相談をもちかけたのが共著者の今川知子さんだ。

 「自分がプロ・スケーターを引退すると決めたとき、これからはスケートの見方をもっと幅広く伝えていけたらと思ったんです」

 アマチュア時代に全日本選手権4位という成績を残し、引退後はプロやコーチとしてキャリアを積んできた今川さんには、他のライターにはない豊富な専門知識と人脈があった。

 「書くのは初めてで、どんな風に伝えれば読者に分かりやすいのか、ずいぶん考えましたけれど、大変だったことといえば、忙しい選手を取材するためのスケジュール調整くらいでした。安藤美姫ちゃんなんかは、移動の新幹線の中でインタビューをしましたね」

 時に自分の選手時代の記憶を辿りながらの取材で、これまで表に出ることがなかったエピソードも数多く引き出した。

 「今の選手たちはジャンプでもステップでも技術面に偏りがなく、総合力があります。それぞれの個性もあるし、ルックスもいい。スタイルも欧米人に見劣りしないから、芸術面でも十分に勝負ができる。それに昔みたいにプレッシャーと戦うのではなく、みんな楽しんでいて、ジュニア時代からの国際経験もあって物怖じしないですよね。ハイレベルな戦いはこれからも続くでしょうし、後輩たちのさらなる活躍が楽しみです」

 本書は、村主章枝、荒川静香、恩田美栄、安藤美姫、浅田舞・真央姉妹ら注目の選手はもちろん、過去のメダリストたちやプロの世界、さらには続々と閉鎖に追い込まれている日本の厳しいリンク事情まで幅広いテーマに触れ、巻末には写真入りの用語集も収録している。

 環境がまったく異なる二人の著者は、口を揃えて熱く語った。「この本を読んで、もっともっとスケートを知ってほしい」と。

ページトップ