「ひちょりさん、直人さんが入ったことは大きい」

　この評価を、常々「優勝する」と言い続けている、尾花高夫監督、選手たちはどのように受け止めているのだろうか。

「あの人たち（評論家）も仕事だからしょうがない。うちはともかく皆がひとつにまとまって一戦一戦、全力でやるしかない」

　尾花監督はシーズン前にそんなコメントを残している。「ひとつにまとまって」「全力で」「目指すは優勝」……昨年も何度か聞いた言葉のような気がする。しかし、結果として団結できなかった故に95もの黒星を積み重ねてしまった。

　昨年の最終戦後、ベンチ裏で加地隆雄球団社長が選手を集めて檄を飛ばした際には、不甲斐なさに涙を流して悔しがった選手もいたという。尾花監督は選手との対話を重視すると言い、オフにはリーダーになれる選手として森本稀哲、渡辺直人を獲得。それらにより昨年までのチームと雰囲気が一変したという話も、聞こえてはくる。

「変ろうと努力している……」

　それがどれほどのものなのか、肝心の選手はどのように感じているのだろうか。

　ある中堅選手からはこんな言葉が返って来た。

「主軸だった内川さんが抜けて、戦力的にはもしかしたら去年より落ちているかもしれないけど、チーム内の雰囲気というか団結力、選手のモチベーションは去年とは比べ物にならないほど上がっていますよ。やっぱり、ひちょりさん、直人さんが入ったことは大きいと思いますし、それに去年まであれだけ負けてさんざん悔しい思いをしましたから。周りからの評価が低いのはしょうがないですよ。最下位に予想してくれていた方が気が楽ということもありますしね」

　自信に漲るその言葉、開幕戦を見るまでは俄かに信じ難かった。

ということで開幕戦。相手は連覇を目指す中日ドラゴンズ。

　4月12日、ペナントレース開幕戦。

　7年連続で開幕を落としている横浜は、本拠地に昨年のセ・リーグ覇者にして16勝8敗とカモにされた中日ドラゴンズを迎えた。約9割の人間に最下位と予想されるチームと、少なくともCSは確実、連覇を目指すチームとの戦い、である。

　開幕戦を負けられない試合とするか、144分の1と捉えるかは、監督によって意見が分かれるところだが、今季のベイスターズに負けていい試合なんてあるわけがなかった。初っ端から負けが込めば、あっという間にいつもの定位置に腰を据えてしまうのは明らか。いや、今季はペナントで沈むだけでは済まない。昨年末の球団保有の問題も未解決の状態では、どんな事態が起こっても文句はいえないのだ。

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