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「決着」した薬物問題に残された疑問。 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

posted2006/12/07 00:00

 ディープインパクトの禁止薬物検出問題は、フランスの競馬統括機関「ギャロ」の発表と、それを受け入れたJRAの記者会見によって一応の決着を見た。気管支拡張剤「イプラトロピウム」が、凱旋門賞のレース直後の検体(採取されたディープインパクトの尿)に陽性反応として検出され、これがフランスのルールに抵触する以上、3着が取り消しになるのは当然だ。賞金はもちろん没収され、競走成績書も書き換えられる。仮に勝っていたとしても、ディープインパクトの名が凱旋門賞の歴史に残されることはなかったのだ。また、管理責任者である池江泰郎調教師に最高額の罰金が科せられたのも、このタイプの不祥事の後始末としては当たり前と言える。故意ではなかったという認定も同時にされたわけだが、最高の舞台で起きた事件だけに結果責任は免れるものではない。池江師も即座にこれを受け入れることを表明している。検体の分析システムは、世界中のどこでも、疑う余地のない公正さが保たれているからだ。

 しかしそのあとの、なぜディープの体内に禁止薬物が残されてしまったのかという疑問に対するJRAの説明は、素直に納得できるものではなかった。6日も前に投与をやめていたのにその薬品がこぼれて寝藁に付着、それを馬が摂取したという怪説だ。寝藁は毎日天日干ししたうえ、少なくとも3日に一度は全部交換するものだ。到底ありえないこと、と言わざるを得ない。

 今回の件で、JRAは二つの初動ミスを犯している。理事長が「汚点を残した」と独自の調査をする前に自国のヒーローに断罪を下してしまったことと、ギャロが出走停止を含む処分を下していない時点で「国内の出走は問題ない」と、国際ルールを無視する形でこれも断じてしまったことだ。

 JRAとしては、代表者のコメントをひっくり返すわけにもいかないので、池江厩舎以外の手による策謀という可能性は排除するほかなかったのだろうし、その見返りとしてギャロに出走停止だけは勘弁してください、と懇願したのではないかとも考えることができるではないか。

 穿ち過ぎ、と笑われてもいい。ディープインパクトとそれに関わる人たちは、その何倍もの恥辱を甘受しているのだから。

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