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閑寂としたレース、これはF1と呼べない。 

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今宮純

今宮純Jun Imamiya

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2005/07/07 00:00

閑寂としたレース、これはF1と呼べない。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

 荒涼たるスタートの場面、たったの6台。グリッドはがら空きのまま。F1史上49回目となる“USGP”は歴史に残るスタートを切った。僕はピット反対側、巨大なスタンドの中央ぐらいに位置するテレビ放送席から見ていた。

 コメントが出てこない。いつもならポールポジションから中団、時にはグリッド最後尾まで流し目で見て、誰がいいスタートをしたか、ミスったか、抜いたか、接触したか、自分がその中にいるかのようにピリピリしているはずなのに、なんとスローで緩い瞬間なんだ、これは!

 スタート後、コース上よりも周囲にいる観客の動きが気になった。こんなに集中できないレースは初体験だ。

 ブーイングの嵐。サムアップならぬサムダウンのポーズ。この国の人々は自分の感情を爆発させるために、スポーツを観戦しに来る。ほんのちょっとだけMLBよりNFLよりNBAよりもF1が好きなアメリカン。そんなファン達が、朝からバーガーをビールで流し込みながら、このスタートを待っていたのだ。

 大混乱の発端は、初日フリー走行中に起きたトヨタ2台のタイヤトラブル。ミシュランは7チーム14台に供給するメーカーとして精査した結果、潔く技術面での非を認めた。そしてチームとFIAに対して謝罪。減速して走るか、コース一部変更を超法規的措置として認めてもらえないか、判断を仰いだ。

 スタート2時間前まで協議が続けられた末、FIAに拒否され、ミシュラン勢はフォーメーションラップにだけ加わり、安全上ピットに入ってリタイアすることを決めた(これは“ボイコット”には当たらない)。一部噂では1周だけ走るとか、あるいはグリッドにも着かないと言われていたが、彼らはそうした。そして前代未聞の6台スタートとなった。

 日本のファンの方々には深夜の異様なF1生中継と映ったろう。世界各国では時差の関係で、プライムタイムに“ミニF1インディ・バージョン”生中継となり、放送を途中でカットしたヨーロッパのテレビ局もあったと後で聞いた。インディアナポリスにいたファンだけではなく、全世界のファンがたった6台のGPを見た。これはもうモータースポーツではありえない。個人的に怒りながらも、それを抑えて見届けるしかなかった。

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