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トリプル世界戦で新井田は脱皮できるか。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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posted2008/09/04 00:00

 近年は日本でも「マルチ世界戦興行」が珍しくないが、9月15日パシフィコ横浜のトリプル世界戦を放映するテレビ東京は、これに2日前ウクライナで行なわれる木村登勇のWBA世界S・ライト級王座挑戦の録画を加え、3時間番組で「世界戦4試合」を用意している。「企画で勝負」の同局らしい試みだが、長時間視聴者を飽きさせない好試合が続くことを祈るばかりだ。

 このトリプル戦での注目は、新井田豊対ローマン・ゴンサレスのWBA世界ミニマム級戦だ。地味なチャンピオンも良き相手を得て自らも光り輝くことがあるが、新井田にとってまさに今度の試合がその好機だ。21歳のゴンサレスは、あのニカラグアの英雄アルゲリョが指導し、デビュー以来20連勝18KO負け知らず。強打者のバロメーターであるKO率90%(新井田は33%)は、最軽量級では考えられない数字である。アルゲリョを髣髴させるボディへのアッパーカットは、新井田を苦しめそうだ。チャンピオン自身も「危険な相手。試合がどうなるか、俺も実際のところ分からないんですよ」と、気を引き締めて調整を続けている。

 もっともゴンサレス、初めて判定に持ち込まれた去る1月横浜の松本博志戦では、悪コンディションもあって防御面で意外な弱点を露呈した。次はベストで臨んでくるはずだが、新井田の頭の中にはしっかりこの情報がインプットされていることだろう。攻撃的な挑戦者の戦法は新井田には噛み合う。だからこそ、危険はあっても、好勝負が期待できるのだ。

 7年前に新井田が初めて世界王座についた時、当時の王者の中で「一番長く王座に君臨するのでは」と予想した。これは1度も防衛戦をやることなく放棄してしまい驚かされた。「あの頃の俺はガキだった」と自身も振り返るが、実際その後の成長、特に精神面での成長には瞠目させられる。'04年にあらためてベルトを獲得すると、これまで7度も防衛。具志堅用高のV13はまだ先にしても、今度勝てば徳山昌守の歴代3位となるV8に並ぶ。そうなれば安泰王者として二桁防衛も夢ではないだろう。新井田が「自分の人生の分かれ目になる試合」と位置づけるのももっともなのである。

 両者のバックグラウンドを知らずに観戦したとしても、楽しめる試合になろう。

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