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夏到来。慶大は“地獄”の合宿を越えてゆけるか。 

text by

大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2005/09/01 00:00

夏到来。慶大は“地獄”の合宿を越えてゆけるか。<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

 「コンチクショウ! と思う気持ちを持って欲しいんですよ」

 慶大の新監督、松永敏宏は言った。真夏の山梨県山中湖。高原の湖畔にあるグラウンドは突然の雷雨に見舞われていた。選手たちは全身に泥を貼り付けてボールを追う。松永はその姿を目で追う。

 「誰だって、頑張ったのに結果が出なければ腹が立ちますよ。昔の慶応なんて、それだけでやってたようなもんですよ。でも何もやってなかったら腹も立たない……実際、去年のワセダ戦なんて、やられっ放しでしたもんね」

 過去4年間の早大戦のスコアを見れば、松永の嘆きも理解できる。21対54、5対74、29対56、そして昨季が17対73。控えめに言っても全て大敗だ。

 「そんなとき“コンチクショウ!”と思わないのか?」

 この言葉は、OBでファーストリテイリングの社長を務めた玉塚元一氏が使ったものだ。ラグビー部で同期だった松永の依頼で、8月3日に日吉グラウンドを訪れて講演した玉塚氏は、学生時代に『地獄』と呼ばれた夏合宿を乗り越えた経験が、その後も困難を克服する原動力になったと話したという。加えて「結局は練習量が多い方が勝つと思うんです」と明快に言い切る松永監督自身の信念。かくして山中湖には『地獄』が復活したのだが……。

 「いや、これくらいじゃまだ地獄とは言えません。僕らの時代は『あれだけ練習やったんだからゼッタイ勝てる』と自信を持てるだけの体力をつけていた。今年すぐそこまでいくのは正直難しい。でも、せめて意地を持って戦ってほしいんです」

 慶大主将時代は平尾誠二率いる同大を追い詰め、微妙なスローフォワードの判定で敗れた伝説を持つ松永はじめ、今季の大学指導者には個性的な新顔が目立つ。関東リーグ戦で2年連続入れ替え戦の屈辱を嘗めた中大には、日本代表コーチとして梶原宏之やシナリ・ラトゥを鍛え上げた村田義弘監督が就任。立正大の元日本代表SH堀越正巳監督も、就任7年目でついに1部に参戦だ。過去4年、清宮ワセダvs.春口カントーの構図が続く大学戦線だが、両校が際立つのは選手層の厚さとともに監督自身の勝利への執念だ。両雄の牙城を崩すだけの決意はあるのか。夏は指導者にとっても勝負の季節だ。

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