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ヴィッツレースに見える、モータースポーツの醍醐味。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2008/11/06 00:00

 F1日本グランプリを現地観戦した方のうち、前座レースとして行われたネッツカップ・ヴィッツレースをご覧になった方は、果たしてどれだけいるだろう。登録ナンバーのついたノーマルヴィッツで行われる参加型のレースに、F1ファンが興味を示さない気持ちも、わかるにはわかる、が。

 わたしは常々、「日本でもっとも社会に普及しているスポーツはモータースポーツである」と断言している。ただのホラではないつもりだ。自動車をスポーツの道具と考えたとき、これほど社会に根付き普及しているものがほかにあるだろうか。自家用車の普及率は、おそらくバットやグローブやサッカーボールの普及率より、はるかに高いだろう。

 でも、「だからこそモータースポーツは社会に受け入れられないのだ」とわたしは続ける。なぜならば、それだけ多くの人が、マイカーの延長線上にモータースポーツの競技車両を理解した気になって、自動車競走を舐めてしまうからだ。

 乗用車と競技車両は似て非なるものである。特に現代の乗用車は、ユーザーに極力「ドライビングテクニック」を要求しないよう作られていて、基本的には誰が乗っても気持ちよくスムーズに、しかも安全に走れる。アクセルを踏めば踏んだだけ速くも走る。いまだに要求される技術は、縦列駐車くらいではあるまいか。

 しかし、乗用車であっても、ひとたび性能限界まで持って行くと、その性格は大きく変わる。お買い物クルマの典型であるヴィッツとて例外ではない。普通のユーザーが日常乗る限り、その限界ははるか彼方にあって出会うこともないから気づかないだけなのだ。

 実は、自動車レースとは、まず自動車を性能限界まで使ってから始まる競走のことである。それまでの速い遅いは道具の性能差にすぎないが、それを超えると、いきなりドライバーの能力が浮かび上がる。F1だろうがヴィッツだろうが、それは同じだということを、できるだけ多くのファンに知っていただきたい。そうすれば、ヴィッツレースもF1と同じレベルで眺めて楽しめるようになるし、F1も、より深く理解できるようになる。

 わざわざ富士まで出かけて、F1だけを観てヴィッツレースを見逃した? なんともったいない話であることか。

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