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絶不調横綱がもたらした、淋しく、情けない一言。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2004/10/21 00:00

 動かぬ身体に、萎えた気持ち。心身ともに崩れきった朝青龍が、久々の大負けを喫した。秋場所、5連覇と年間最多勝(83勝)に向けて、3連勝と好スタートした横綱に、一体何が起こったのか。4日目、栃乃洋を土俵際まで攻め込みながら、まさかの逆転の突き落としに裏返されて初黒星。ここから朝青龍は、本来の厳しい立合から一気に攻めきる相撲がほとんど取れなくなった。岩木山、雅山の突きに土俵の外まで吹っ飛ばされ、若の里には栃乃洋戦の再現、千代大海・魁皇の両大関には最初から相手十分の形とされて完敗。昨年春場所の横綱昇進後、実質初の1桁である9勝止まりという屈辱的結果に終わった朝青龍は、相撲の恐さ、難しさを実感したに違いない。

 今場所の朝青龍は「当たれない・押せない・差せない・攻めきれない」のないない尽くし。先場所までの、無敵の強さを誇った朝青龍の姿は無かった。その最大の原因は、自他共に認めた場所前の稽古不足である。今場所の取組後、朝青龍は度々「足、身体がパンパンに張っている」とこぼし、連日3時間にも及ぶ鍼やマッサージを施していたと語った。通常、力士は番付発表後の1週間で猛稽古を積み、限界近くのピークの状態まで自分を追い込み、そこから徐々に稽古量を落とし初日に向けて調整を計る。横綱大関ともなれば無理な稽古をしいられることは皆無で、怪我などがない限り、調整不足など断じて許されない。その地位の責任を全うする上で必要不可欠な下準備を怠った代償は、あまりにも大きかった。これまで圧倒的な力の差を見せつけていた朝青龍とはいえ、序盤にピークを迎えてしまい、場所中に悲鳴をあげるようでは、15日間は到底乗り切れるはずもない。ましてその状態を口に出してしまうのは、言語道断。どんな状況でも弱音を吐かず、常に敢闘魂で頂点まで登りつめた朝青龍が口にするのは、あまりにも淋しく情けない。本人には何気ない一言かもしれないが、横綱として最も恥ずべき弱音であることを、肝に銘じてもらいたい。

 様々な大記録への挑戦が、すべて振り出しに戻ってしまった朝青龍。その稽古量の少なさには前々から心配の声もあったが、今回初めてその心配が現実のものとなった。本番さながらの稽古の質は申し分ないだけに、残るは量。その巻き返しに期待したい。

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