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雨の鈴鹿で思い出した、とある風説について。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2006/06/08 00:00

 日本育ちの選手は元々モーターレーシングに向いていないのではないかという身も蓋もない説は、長い間語られ続けてきた。その理由のひとつとして挙げられるのが、日本のコースの路面コンディションである。日本の主立ったコースの路面は整備が行き届いており、それに慣れてしまうと雨などで状況が変わったときに対応ができない。しかしヨーロッパの選手は、荒れた路面のコースでレースを経験しているので、環境の変化に強いというわけだ。

 期待を集めた全日本選手権フォーミュラ・ニッポンの開幕戦は、富士スピードウェイの悪天候により予選結果のまま2周を走って決勝が打ち切られ、鈴鹿サーキットでの第2戦が事実上の「開幕レース」となった。ところがこの第2戦の決勝レースが荒れた展開になった。というのもスタート時にはドライコンディションだったのに、レース終盤になって雨が降り始めたからだ。

 微妙なタイミングで路面が濡れ始めたため、決断の早いチームとドライバーはドライタイヤを雨用タイヤに履き替えた。ところが上位を走っていたヨーロッパ選手たちは、なにがなんでもドライタイヤで残りを走りきろうと突進を続けたのだ。濡れた路面にドライタイヤでは当然十分なグリップが得られず、車体の安定は失われスピン寸前まで姿勢を崩す場面も見られたが彼らは暴れる車体を押さえつけて走り続けた。驚いたのは、首位を走るロイック・デュバルも、2位につけたビヨン・ビルドハイムも、今年初めて日本へやってきた新鋭、鈴鹿でレースをするのは初めてだったことだ。しかし彼らは恐れることなく突進した。

 後方からはペナルティで遅れたブノワ・トレルイエがやはり猛然と追い上げて3位の山本左近に攻めかかる。山本もドライタイヤで耐えるレースをしていたが、トレルイエの気迫が勝っていた。最終ラップのシケインで山本はトレルイエに押しのけられるように3位の座を明け渡してしまった。

 フィニッシュしてみたら表彰台の上には日本選手の姿はなかった。神懸かりにも見えたデュバルとビルドハイムの走り、そしてトレルイエの気迫。そういえば、冒頭のような説があったなあとしみじみ思い出されたものだった。

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