SCORE CARDBACK NUMBER

日本男子テニスの至宝、ただいま赤丸急成長中。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2005/09/29 00:00

日本男子テニスの至宝、ただいま赤丸急成長中。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 牛若丸のようだった。もちろん、牛若丸を直に見たことはない(当然ですが)。しかし、八艘飛びの話を現実にしたようなテニスに、誰もが魅了された。全米ジュニアで16強入りしたジュニア男子の逸材、錦織圭(にしこり・けい)は、まだ15歳だ。日本最年少プロの森田あゆみと同年齢だが、男子は女子より層が厚く、18歳以下のジュニアでも15歳が活躍するのはまれなこと。プロツアーと同様に、ジュニアツアーにも年齢によって年間出場大会数の制限がある。つまり経験という点で、18歳とは大きな隔たりを余儀なくされるのだ。

 錦織は、森田が3位になった'03年オレンジボウル(ジュニアの世界選手権)14歳以下で準優勝し注目された。今年のウィンブルドン・ジュニアでは、予選を勝ち上がり初の4大大会ジュニア本戦入りを果たした。初戦は昨年のオレンジボウル18歳以下の覇者ニーリー。錦織は腹筋を痛めていたこともあり、フルセットで敗れた。続く全米ジュニアでは、そのニーリーと2回戦で対戦し雪辱を遂げると、3回戦で、今年のウィンブルドン・ジュニアの覇者シャルディーに挑んだ。錦織は駆け抜けるようなフットワークと魔法のようなラケット捌きで、一気に5―2とリードし、2本連続のセットポイントを握った。そこから経験不足を露呈し、勝ちを意識したことで逆転を許す。結局、ストレートで敗れたが、その敗戦にもかかわらず、彼の明るい将来を疑うものは誰もいなかった。全米の会場では、女子で準優勝したピエルスの練習相手も務めた。練習試合では7―5で勝ったという。

 島根県松江市の出身。スポーツが盛んな地域ではない。テニスも地元のテニススクールで、8人の生徒が1面でプレーする中で育った。エリート教育で成長した選手ではない。それは、群馬県太田市出身の森田も同様だ。隠れた素材は、どこにでもいるのだろう。その選手をうまく見つけ、どのように育て上げられるかに、日本のテニスの将来はかかっている。錦織は、現在、米フロリダにあるシャラポワやアガシを生んだ有名テニスアカデミーにテニス留学中。森田も、杉山愛の個人事務所が経営するアカデミーで練習を積んでいる。10年後、日本のテニスがどのように変わっているか、非常に楽しみになってきた。

ページトップ