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100年ぶりの頂点を狙う100マイルの豪速球投手。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2008/04/03 00:00

100年ぶりの頂点を狙う100マイルの豪速球投手。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 「昨日のことのように感じるときもあれば、ずっと昔みたいな気もする。でも、この10年がどうだったかといえば、やっぱり長かったな」

 カブスのキャンプ地メサのクラブハウスでケリー・ウッドは、考え込んだ末に、過ごしてきた歳月をそう振り返った。

 '98年、マーク・マグワイアとサミー・ソーサのホームラン合戦に沸いたシーズン、21歳の新人ウッドも1試合20奪三振のメジャータイ記録を達成するなど、100マイル近い剛速球と高速スライダーで全米を熱狂させた。新人王にも選ばれ、輝かしい将来は約束されたかにみえた。

 しかしその後の10年でウッドは、故障とカムバックを繰り返すことになった。

 「健康な身体でスプリングトレーニングを過ごせることの幸せを感じている」

 という平凡な言葉にも実感がこもる。

 彼の将来が暗転したのは、2年目のスプリングトレーニングでのことだった。

 '98年のリーグシリーズ進出を賭けたプレーオフ。ヒジ痛で1カ月も登板から遠ざかっていたにもかかわらず、先発陣が底をついたため、ウッドはマウンドに上がらざるを得なかった。その歪みが、翌年のスプリングトレーニングで靭帯を傷めることに繋がり、シーズンを棒に振ったのだ。この世界に「たら」、「れば」は禁句だが、自身が「賢い選択ではなかったね」と振り返るように、もしあの登板がなかったら、今頃は大エースとして君臨していたかもしれない。以来、フルで投げられたのはわずか3シーズン。逆に、故障者リスト入りは11回を数える。

 復活の兆しを掴んだのはリリーフに転向した昨年のこと。さらに今シーズンは抑えのライアン・デンプスターが先発に回ったことで、クローザー候補のひとりに指名されている。期待に応えるように、オープン戦2試合目では、デビュー当時を彷彿させる98マイルの剛速球を投げた。

 しかし、本人はいたって慎重だ。

 「今はクローザーになることは考えない。いかに現在の体調を維持していくか。頭にあるのはそのことだけ」

 それでいて、表情は実に明るい。アゴ髭がよく似合っているというと微笑んだ。

 「これ、“ヤギ髭”っていうんだよね」

 100年ぶりの世界一を狙うカブスには、『ヤギの呪い』から解かれたウッドの完全復活が、どうしても不可欠だ。

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