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機械では測れないテニスの奥深さ。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

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photograph byHiromasa Mano

posted2005/04/14 00:00

機械では測れないテニスの奥深さ。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 テニスの審判の数をご存じだろうか? 大会の規模にもよるが、グランドスラムになると、コート1面に線審が7人、ネットに1人、そして主審という9人体制となる。野球やサッカーという、テニスよりも広いグラウンドを使う競技よりも、その数は多い。言い換えれば、テニスはそれだけライン際の判断を争うスポーツだと言える。

 昨年の全米準々決勝で、カプリアティがセリーナ・ウィリアムズを破った試合は、主審の誤審で大きな話題となった。最終セットの第1ゲームで、セリーナ・ウィリアムズが放ったショットに対し、主審は線審の判定を覆し、アウトの判断を下した。しかし、テレビが流していたビデオも、テレビが独自に開発したCGによる判定もイン。その後も微妙な判定が続き、敗れたウィリアムズは、会見で主審に不満を訴えた。主審を務めたアルベスさんは、その後、審判を外され大会を去ることになった。この騒動をきっかけに、今年の全米で、ビデオによるインスタント・リプレーシステムが導入されようとしている。コート上で主審と選手がビデオを見て、微妙な判定を判断するというものだ。

 テニスの場合、野球と違い逆転満塁ホームランはない。かと言って、残り1分で3点差を跳ね返すことが困難なサッカーとも違う。試合時間は無関係で、どんなスーパーショットでも、凡ミスでも1ポイント。誤審は困るが、誤審があったとしても、わずか1ポイントにすぎない。取り返すことは十分に可能だ。テニスで、誤審が直接、勝敗を決定づけたことは非常に少ない。誤審によって集中力が乱され、敗戦に追い込まれることは多々あっても、それは誤審よりも選手側の問題だ。

 スポーツは、審判とともに発達してきた。そこには、人間の下す判断として、誤審も許容範囲に含まれてきたのだと思う。リプレーシステム導入で、試合が何度も中断したりすれば、選手やファンも興ざめだろう。誤審は減るかもしれないが、試合の流れは分断され、テニスの迫力は伝わらない。誤審を容認するつもりはないが、誤審をなくすシステムが、テニス本来のおもしろさを削ぐなら、止めた方がいい。選手が誤審などものともせずにプレーすることで、ファンは一喜一憂するのではないだろうか。

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