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アテネの余韻残る今が競技発展の正念場。 

text by

横森綾

横森綾Aya Yokomori

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photograph byFuko Lee(2)

posted2004/10/07 00:00

アテネの余韻残る今が競技発展の正念場。<Number Web> photograph by Fuko Lee(2)

 全階級でメダルを獲得したアテネ五輪で、女子レスリングは世間に存在を知らしめた。私たちの記憶がまだ新しいいま、10月8、9日に東京の駒沢体育館で6カ国が参加する国別対抗団体戦のワールドカップが開催される。

 同大会には、伊調千春、馨、吉田沙保里、浜口京子ら五輪メダリストだけでなく、4度世界を制した山本聖子、'00年に年間最優秀レスラーとして国際表彰された坂本日登美らも出場する。あらためて日本女子の強さを見せつけてくれるだろう。

 さらに今回は、9日19時から日本テレビ系列で中継もされる。レスリングがゴールデンタイムに放映されるのは、史上初の経験だ。

 中継に踏み切った日本テレビ関係者は「アテネで五輪公式種目になり、はじめの一歩を踏み出した女子レスリングを近くで見守ってゆきたい」から決めたのだという。

 そして、個人的な感想なのだが、と前置きして「五輪での彼女たちの試合に心打たれると同時に、美しいと感じた。レスリングは女性にふさわしいスポーツだと思う」と、期待もつけくわえた。

 彼女たちの環境も、アテネ五輪を境に変わり始めた。これまで、女子選手は就職と同時に一線から退かざるをえなかった。企業などが選手として採用しないため、練習相手や環境などを維持できなかったからだ。

 ところが、これまで女子選手の採用を見送ってきた企業などが、前向きな姿勢を見せ始めた。自衛隊体育学校レスリング班にも女子が発足し、稼働し始めている。

 「ちびっこの数は多いのに、私たちのように、世界へ出て1番になろう、と続ける子どもがすごく少ない。みんな辞めてしまう」

 5歳からレスリングを始めた伊調千春がそう、呟いたことがある。少年大会は1万人超の規模なのに、日本代表でも練習相手の確保に苦慮する、というのが日本女子の現状だ。

 五輪メダリストの彼女たちが憧れの存在であり続けることで、子どもたちは目標を持ちやすくなる。競技を継続する人口が増し、質と量を伴った選手層の厚みができれば、世界をリードする日本の位置も維持できるだろう。

 アテネ五輪とそれに続く華やぎは、日本の女子レスリングの未来を形作れるか。五輪が終わった今が、正念場なのかもしれない。

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