SCORE CARDBACK NUMBER

武豊も胸が一杯になった、
数多くの人々の善意。
~騎手会による被災地支援の成果~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph bySPORTS NIPPON

posted2011/04/12 06:00

武豊も胸が一杯になった、数多くの人々の善意。~騎手会による被災地支援の成果~<Number Web> photograph by SPORTS NIPPON

阪神で募金活動を行なう武豊騎手会長の隣には、高松宮記念を制したリスポリ騎手の姿も

 常に前向きな姿勢を崩さない武豊騎手でも、騎手会長の重責を背負えば考え方も慎重になる。大震災から僅か8日後の競馬開催の決定については「この状況下で競馬を再開して本当にいいのだろうか」と腰が引けていたというのだ。「平常心で乗れるとは思いません」とも言い、実は開催に消極的。この心情は、プロ野球の選手会長、タイガースの新井選手とダブって見えた気がした。

 それでもJRAは「競馬を開催することで被災地を側面から支援したい」と積極策を打ち出した。停電の可能性がある中山や、被災地そのものである福島は中止としたが、阪神と小倉は「東北関東大震災被災地支援競馬」として開催。

 地震直撃で断水などの実害も被った関東の人馬にとっては受難が続く形になったが、それでも遠距離輸送も厭わずに西日本の競馬に参戦し、成績的にも五分に戦えていた。阪神競馬には期せずして東西のトップジョッキーが集結し、見応えのあるレースが繰り広げられたのだ。武豊騎手も「いざとなったら不思議な集中力が出ました。見えない力に押されたような感覚です」と、晴れやかな表情だった。

「運動は継続的に行なっていきます」と武豊騎手会長。

 騎手会が全面的に企画実行した(最終レース終了後に、その日に騎乗した全騎手が整列して握手会を行なった)募金活動にも当人たちが驚くほどの温かい反応があった。阪神で3日間、小倉で2日間頭を下げ続けた結果が、2462万2920円という大きな金額につながった。

 感情を表情に出さない術を心得ている武豊騎手も、「お父さんに手を引かれた小さな子が、長い間かけてためたはずの小銭がいっぱいに詰まった貯金箱を持ってきてくれるなど、たびたび胸が一杯になって困りました。ファンの皆さんとこれほどの一体感を共有できるなんて、想像もしていませんでした」と、声が裏返っていたほどだ。

 義援金はこれだけではない。日本馬主協会が5000万円プラス1走あたり3万円、日本調教師会が500万円プラス1走あたり1万円、日本騎手クラブが500万円プラス1走あたり3000円を拠出。さらに入場料収入相当分とゼッケンのチャリティー販売の成果も含めて、総額で2億4000万円の善意が集まったのだ。

「運動は継続的に行なっていきます」と騎手会長。社会の中での競馬の役割が見えてきたようだ。

■関連コラム► ひとりではなく、オールジャパンで!スポーツ選手の支援と本当の「復興」。
► 裁決委員の制裁には、明確な基準を設けるべき。~競馬界で相次ぐ不思議な“事件”~

関連キーワード
武豊

ページトップ