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新日本激震で思い出す“東洋の巨人”の言葉。 

text by

門馬忠雄

門馬忠雄Tadao Monma

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posted2004/11/04 00:00

 新日本のゴタゴタ騒ぎにはもう驚かない。で、今回は渉外・マッチメークを一手に握っていた上井文彦取締役(50)が10月20日付で退社したが、どうやらこれは穏やかでない。11・3両国国技館、11・13大阪ドームとビッグマッチを控え、現場責任者の突然の辞任は選手、関係者に少なからぬ動揺を与えている。プロレスと格闘技の2本立て路線を推し進めてきた人だけに、新日本はかなりの軌道修正を迫られる。

 そもそも内紛の火ダネは今年6月のトップ交代にあった。設立者・アントニオ猪木に経営を託された草間政一社長(53)は、プロレスビジネスに関してはズブの素人。選手の心理状態を読める藤波前社長とでは大きく違う。経理、営業を見極められても、リングの上まで目が届かない。レスラー出身ではない経営者の泣き所がある。

 選手はワガママだ。誰もがお山の大将になりたがる。そこで選手を束ねる強い統率力が求められる。

 上井氏辞任のもうひとつの理由に、高山善廣、鈴木みのるら外部の選手を重用したマッチメークで所属選手の強い反発を買ったこともあげられる。外部の選手を使えばお金がかかる。ギャラを抑えようとする。純血路線をとる草間社長と確執が生じるのは当然だった。

 いずれにしても、上井氏は一人で何もかも背負いすぎた。K―1、パンクラスなど他団体との交渉でパイプ役としてサポートする人間がいれば、別の道が開けていたはずだ。新日本独自の格闘プロレスを確立しようとして奔走した努力がまったく報われなかった。

 IWGP王者・藤田和之が挑戦者の佐々木健介に史上最短の149秒で王座を奪われた10・9両国大会の混乱ぶりがそれを如実に物語っていた。

 思い起すのは故ジャイアント馬場の言葉。

 「プロレスの経営は難しいよ。選手はワガママだ。常に現場で目を光らせていないとね……。背広組には無理がある」

 そういえば、背広組のプロモーターで成功した例は、父ビンス・マクマホーンの地盤、ビジネスを世襲した米国WWEのトップ、ビンス・マクマホーン Jr.しかいない。

 船頭多くして舵定まらぬ新日本――。

 「信用」と「信頼」を経営理念とした“東洋の巨人”の言葉を噛み締める必要がある。

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