SCORE CARDBACK NUMBER

各国W杯ガイドに見るジーコジャパンの長所。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2006/05/25 00:00

各国W杯ガイドに見るジーコジャパンの長所。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 この時期になっても「守備の約束事がない」と選手が口にするのは、ジーコ監督に罪がある。残念ながらジーコは4年間も監督を続けながら、守備のやり方さえ徹底できなかった。どこから守備をするのか、どうプレスをかけるのか、意思統一できない監督なんて欧州のクラブなら半年でクビだ。

 たとえばオランダ代表のファンバステン監督は、ウィングの選手に「相手のサイドバックがあがっても、オマエは自陣深くまで戻らなくていい」と指示している。攻撃のために力をセーブしろ、中盤の選手がカバーするから、ということだ。ジーコの場合、そういう選手ひとりひとりの役割をはっきりさせていない。だから、左サイドばかりが崩されたりする。

 しかし、ときに長所と短所が裏表になっているように、ジーコのやり方にも、一ついいことがあった。本来「戦術は選手の長所を引き出すもの」だが、えてして二流の監督は「戦術は選手の欠点を補うもの」と考えてしまう。トルシエがいい例だ。ジーコは、そのどちらでもなかった。戦術で長所を引き出しもせず、縛りもせず、その結果、日本が持っていた良さが自然ににじみ出てきた。

 ドイツで発売されたW杯ガイドには、こう書かれている。「日本はテクニックがあり、スペクタクルなサッカーを目指している」。イギリス、オランダの雑誌でも同じ評価だ。ワンタッチによるダイレクトプレー、予想もしなかったようなスルーパス。中盤の選手にボールを渡せば、何かおもしろいことをやってくれる。この道を歩んでいけば、きっと日本独特の魅力溢れるスタイルが完成するはずだ。

 ただ──成長過程であることは否めない。中盤は一発のパスばかりをねらい、リズムが単調になるときがある。野球にたとえるなら、フォークを得意にする投手が、フォークばかり投げるようなもの。決め球を生かすには、他の見せ球も大事だというのに。W杯での日本の課題は、パスサッカーという“決め球”をどう生かすか。そのためには中田英寿のようなクレバーな選手がチームの頭脳になり、90分を通した駆け引きをする必要がある。

 戦術はないが、思想はある。そういう監督に任せたことで生まれた長所と短所をきちんと理解したうえで、6月のW杯を迎えたい。

関連キーワード
ジーコ

ページトップ