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全英初Vをもぎとった、T.ハミルトンの泥臭さ。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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photograph byTaku Miyamoto

posted2004/08/12 00:00

全英初Vをもぎとった、T.ハミルトンの泥臭さ。<Number Web> photograph by Taku Miyamoto

 アーニー・エルス(南ア)に6万2000ポンドを賭けた人物は、さぞかし悔しがったに違いない。7月の全英オープン開幕前日、ブックメーカー(賭け屋)のオッズで、エルスは7倍で1番人気となった。エルスに賭けられた6万2000ポンドはゴルフの賭けでは史上最高額。エルスが勝てば、43万4000ポンド。ざっと8680万円あまりになる、はずだった。

 そのエルスを抑えて優勝したのは、トッド・ハミルトン(米)。米ツアーに何度も挑戦して失敗し、'90年から日本ツアーを主戦場として通算11勝を挙げた苦労人。昨年、8度目の挑戦で念願の米ツアーテストに合格した。賭け率では750倍という大穴がついていた。

 試合は、エルスとハミルトンが4ホールの通算スコアで争うプレイオフ。3ホール目にボギーを叩いたエルスは、1オーバー。ハミルトンはイーブンパー。続く最終ホール。エルスは、2オンでピン手前5mのバーディチャンス。誰もがエルス有利と読んだ。

 ハミルトンの3打目。残りピンまで35ヤードのアプローチで取り出したクラブは、サンドウエッジではなく、ロフト14度のユーティリティクラブだった。

 僕は、それを見てハミルトンの勝ちを予感した。ハミルトンは、格好よく勝ちたいなんて思う余裕も、気持ちもなかった。確実にピンに寄せられる手段は、地上を転がしていく方法が最も安全だ。空中にボールが浮いている時間が長いほど、落としどころはピンポイントに限られる。転がしていけばライン(道)は読める。あとは距離感だけでいいからだ。

 結局、ピンまで80cmに寄せたハミルトンが、難なくパーを死守し、バーディチャンスをエルスは逸した。こうして、ハミルトンのメジャー初優勝は決まった。

 日本ツアーは世界から遅れているとよく言われる。だが、日本育ちのハミルトンを見ると、それは本当なのかと思いたくなる。

 たとえ泥臭かろうが格好悪かろうが、勝利のためにベストを尽くすハミルトンに、アスリートの真の姿を教えられた気がした。

 日本男子ツアーの視聴率が低迷し、女子ツアーの視聴率にグンと差をつけられている。それは選手一人一人のアスリートとしての基本的な姿勢が伝わらないから、と言われても弁明できないはずである。

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