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米1年目、小林雅が語る諦めと切り替えの美学。 

text by

津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

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photograph byYukihito Taguchi

posted2008/10/23 00:00

米1年目、小林雅が語る諦めと切り替えの美学。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 なかなか自分の思い通りには行かない。スポーツに限らずどの世界でも共通のことだが、それを乗り越える秘訣として「諦め」と「切り替え」が大事だとインディアンズの小林雅英投手に諭されると、妙に説得力がある気がする。

 57試合で4勝5敗、防御率4.53、6S。メジャー1年目の今季、小林が残した数字だ。千葉ロッテ時代に日本球界初の7年連続20Sを記録し“幕張の防波堤”とよばれた守護神からすれば納得できるはずはない。だが当の本人は「日本時代は9年間ずっと同じ抑えをやっていた。マンネリというか、球場へ向かう楽しさが薄れていると感じてたんです。今は登板するシチュエーションが読めないので、難しいっちゃ難しいけど、その読めない部分が楽しいっちゃ楽しいんですよね」と屈託ない。

 根幹にあるのは「なぜ僕は野球が好きなんだろうって思うと、思い通りにならないことをやっている楽しさが大きなウエイトを占めている」というメンタリティだ。33歳にして再び中継ぎからスタートし、一時は2試合に1回のハイペースで登板。そして一度は守護神の座をつかみながらも、疲れの見えた後半戦は登板機会も激減したが意に介さない。そんな価値観は投球術にも反映。「打ちとった打球がヒットになり、失投でも打ち損じてくれることもある。だからこそ三者凡退や0点にこだわるより、どんな形でも最後に勝って試合が終わればいいんです」と言い切る。

 そんなクローザーらしからぬ“諦めと切り替えの美学”が、何より小林の武器だ。「抑え=フォーク、剛速球、三振が取れる……。それは間違いじゃないし、みんなが安心して見てられるけど、僕はそういうボールを投げられないですから。ましてメジャーに来れば、余計にむずかしさは増える。その意味で僕は無責任にマウンドに上がってますよ。そのほうが自分のパフォーマンスができるから」

 出塁を許しファンをハラハラさせながらも、最終的には抑え込むため、“劇場型”と表現されたロッテ時代のスタイルはメジャーでも健在だ。「それもクローザーのあり方の一つ」、そう胸を張った小林。日本以上に不確定要素の多いメジャーの舞台を楽しみながら、来季はクリーブランドでも不動の守護神を目指す。

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小林雅英
クリーブランド・インディアンス

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