SCORE CARDBACK NUMBER

アウェーへ乗り込む王者・西岡利晃の目算。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph by

posted2009/03/26 16:54

 5度目の世界戦トライでWBCスーパーバンタム級王座を手にし、'08年度の「努力賞」も獲得した西岡利晃。次はWBCから最上位挑戦者ジョニー・ゴンサレスとの対戦が義務付けられているが、これは日本国内ではなく、5月にも敵地メキシコもしくは米国に乗り込んでの防衛戦となることがほぼ確定した。両陣営の交渉が合意に至らず、世界選手権規則により「入札」に持ち込まれ、その結果、最高額を提示した挑戦者側プロモーターが興行権を落札したからだ。

 この入札はプロボクシング独特の制度である。両者のプロモーターが試合報酬の総額をオファーし合い、最高額を提示した者が興行権を手にする。真っ先に思い出されるのは、'94年のWBC世界バンタム級統一戦。辰吉丈一郎と薬師寺保栄の所属する日本のジム同士がわざわざメキシコのWBC本部まで出かけ、入札に参加した。両陣営にはテレビ局がついていたため入札額も釣り上がり、総額3億4000万円で薬師寺側の名古屋開催が決まった。薬師寺は正規王者、辰吉も暫定王者であったから、配分は五分。辰吉側は1億7000万円を受け取った。今では考えられない景気のいい数字だ。

 薬師寺側は興行権を手に入れるためずいぶん高い買い物をしたかのようだが、日本中が注目する中、辰吉との死闘を制したおかげで、名古屋のローカル王者から一躍全国に顔が知られるようになった。「損して得とれ」とはまさにこういうことなのだろう。

 そして今回、入札に負けた西岡にも、これが当てはまりそうなのだ。王者側が挑戦者の本拠地に赴くのだから、報酬は7対3の配分比率となる。落札額が45万2000ドルだから、額面通りなら日本円で3000万円以上を手にする。国内と違って1枚も試合チケットを売る必要もなく、条件としては悪くない。

 もちろん、敵地の戦いは負けるリスクも高い。これまでのように地元ファンの大応援に力を得て戦うこともできない。しかし、報酬の多寡とは別に、西岡は本場のリングで名を売るチャンス到来と張り切っている。「ベルトを守るという気持ちはない。今度も挑戦者の気持ちです」。過去にアメリカ大陸で王座を守った日本人世界王者は1人もいないから、これはやはり記録に挑戦ということなのだろう。

■関連リンク► アメリカの英雄となったパッキャオの次なる目標。
► 長谷川穂積をアメリカに駆り立てるもの。

ページトップ