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タイのK-1戦士が持つミステリアスな肉体。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

photograph byChiyo Yamamoto

posted2007/09/20 00:00

タイのK-1戦士が持つミステリアスな肉体。<Number Web> photograph by Chiyo Yamamoto

 取材に指定された時間は午前6時だった。本当にそんなに朝早くから練習しているのか? 少々疑問はあったものの、そう言われたら従うしかない。バンコクから車を飛ばして1時間半、マンゴーの産地として有名なチャチュンサーオ県にあるポー.プラムックジムに30分ほど遅れて到着すると、10月3日MAXの決勝トーナメント緒戦で魔裟斗と闘うブアカーオはすでにTシャツが汗で体に貼りつくほど走り込んでいた。

 ジムは典型的なタイ風様式の木造作り。風通しがいいように、天井はあっても壁はない。ジムの背後には大きな川が広がり、川面に突き出すように練習用のリングが設置されていた。これほど大自然に囲まれたジムはお目にかかったことがない。カメラマンが「どこをバックに撮っても絵になる」と唸ったのも頷ける。

 それから延々と練習。ミット打ちでは当たり前のように全力ミドルキック50連発を披露したかと思えば、5〜6mはありそうな竹の棒での昇り降りを繰り返す。日本のジムのように3分ごとにブザーが鳴るタイマーはなかった。アナログ式の古い家庭用かけ時計がひとつあるだけだ。どうやって時間を計っているのかと訊いてみると、ブアカーオはキョトンとした表情を浮かべた。「時計を見て自分で判断しているけど……。どんな練習でも3分以上やることを心がけている」

 結局、この日の練習が終わったのは午前9時30分だった。「いつもこんなにやっているの?」と水を向けると、ブアカーオは生卵にコショーをかけたナチュラル栄養ドリンクを飲みながら頷いた。

 「試合が近づいたら、4時間はやる」

 驚くのはまだ早い。練習は1日2回。午後3時からは夕方の部がある。つまり多い日だと計8時間も練習している計算になる。ブアカーオは我々ムエタイ戦士にとって練習は仕事だと断言した。

 「疲れる時もあるけど、それは当たり前。そう開き直れたらリラックスできる」

 上半身裸になると、以前にも増してマッチョになっていることがわかった。K―1に必要な部位だけ発達しているような体型だ。白眉はヒザの真裏に筋肉がついていること。なぜつくはずのない部分に筋肉がついているのか? 大自然が育んだブアカーオの肉体はミステリアスな魅力で溢れていた。

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