SCORE CARDBACK NUMBER

小さな女王・高雄の、更なる成長に期待大。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

PROFILE

posted2006/12/07 00:00

 今年の全日本選手権女子シングルス決勝は、19歳の高雄恵利加が、身長150cmというハンディをものともせず、初優勝を果たした。記録は残っていないが、1924年(大正13年)に始まった女子シングルスの歴史上、最も小さな女王の誕生だろう。

 決勝の相手は、第1シードで、4大大会でベスト32に進んだこともある中村藍子だった。高雄は今年、ツアー下部のチャレンジャー大会で3勝し、世界ランクを昨年末の315位から自己最高の128位まで上げた。とはいえ、まだ4大大会本戦に出場したことはなく、中村との経験の差は大きい。しかし、中村には「負けられない」というプレッシャーがあった。それを高雄は巧みに利用した。緩急を交えてタイミングをずらし、ミスを誘った。

 身長の低さは、高雄曰く「フットワークとガッツ」でカバーする。サーブも、短い助走をつけてジャンプし、少しでも打点を高くすることで、ここ数年で着実に安定感とスピードを増した。

 今年の春、より一層の飛躍が必要だと感じた高雄は、予定していた米国遠征をキャンセルし、1カ月間練習とトレーニングに没頭したことがあった。

 「スランプじゃなかったんですが、もっとレベルアップしたかった」

 その直後のチャレンジャー大会で優勝し、大きな自信をつけたことは、今回の全日本優勝につながっているだろう。

 高雄は、かつて世界28位になった長塚京子が、引退後初めて一から指導した秘蔵っ子だ。長塚は高雄との出会いを振り返り、こう目を細める。

 「テニスが好きで好きでたまらないというオーラが出ていました」

 二人の関係をあらわす良いエピソードがある。高雄は中学を卒業する時、同年代が早々とプロに転向していくのをうらやみ、自分もプロに転向したいと長塚に訴えた。対する長塚は、「私に勝ったら」と条件を出した。それまでほぼ歯が立たなかった高雄だったが、不断の努力を積み、昨年、渋谷教育学園幕張高2年時に遂に長塚に勝ち、念願のプロに転向した。

 長塚の全日本最高成績はベスト4。ひとまず全日本で、高雄は師匠を越えた。高雄にとって次なるターゲットは、世界の舞台での長塚越えである。

ページトップ