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華やかなWBCの陰で浅尾拓也は牙を磨ぐ。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

posted2009/04/03 07:00

 WBCで盛り上がる日本球界の喧騒をよそに、わが道を往く中日ドラゴンズ。読売グループと親会社である中日新聞社の軋轢など色々な噂が立ったが、3年ぶりのペナント奪回を虎視眈々と狙っている。

 かつて、中日ドラゴンズで監督を務めていたWBC日本代表コーチの山田久志をして「代表選考に加えたかった」と言わしめたのが、その中日の浅尾拓也と高橋聡文である。特に、浅尾はワンポイントもロングリリーフもこなせるため、WBC代表に選ばれていれば、貴重な存在になっていたはずである。

 '08年は44試合に登板して防御率1.79。打者199人と対戦し被本塁打0本は立派。森繁和中日バッテリーチーフコーチは「肩がすぐにできるタイプだから、ウォームアップの球数が極端に少ない。チームにとってはありがたい存在だけど、使いすぎて壊れちゃえば何にもならないんだよね。いずれ先発に転向させるかもしれないよ」と言っていたことがある。

 その機会が意外に早くやってきたのは、川上憲伸のアトランタ・ブレーブスへの移籍がきっかけだった。右の本格派の先発の椅子がひとつ空いたため、浅尾に白羽の矢が立ったのである。

 また投手王国再建を狙う落合監督の留任も大きい。中日には朝倉健太、中田賢一、吉見一起ら右の本格派が揃っている。それにもう一枚加えようというのだ。

 しかし、先発陣に加わるには最低7回を投げきるスタミナだけでなく、長いイニングを乗り切るための球種が要求される。そこで浅尾は、師と仰ぐ川上にカットボールの教えを請いに行ったのである。

「簡単にできるわけない。器用な奴しかできん」と言いながらも、川上は厳しくも丁寧に教えてくれたという。

 川上の恩に報いるためにも、キャンプ中から精力的に取り組み、新球種獲得にも徐々に手ごたえを感じ始めている。

「同じ海の向こうでも、サムライジャパンより、憲伸さんのほうが気になる」という浅尾。中日の地元である愛知出身だけに周囲の期待も大きい。

「大事に育てれば、憲伸以上のモノになる」と山田WBC代表コーチも、その素質に太鼓判を押している。WBCの陰で覇権奪回を目指す中日に、新たなエースが生まれようとしている。

■関連リンク► 新生ドラゴンズが突っ走るか。 (2009年4月2日)
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