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鉄壁の守備の10代たちが女子テニスを変える。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

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photograph byHiromasa Mano

posted2007/09/20 00:00

鉄壁の守備の10代たちが女子テニスを変える。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 世界32位のアグニエシュカ・ラドワンスカは、マッチポイントを決めると、思わず両手でガッツポーズを作った。全米3回戦。前年度覇者で世界2位のシャラポワを倒した瞬間だった。約2時間の試合中、顔色ひとつかえずにプレーしていたラドワンスカが、最後に初めて笑顔を見せた。

 シャラポワは今大会絶好調だった。1、2回戦合計で2ゲームしか落とさなかった。3回戦も、第1セットこそ失ったが、第2セットは6―1。最終セットも主導権を握っていたかのように見えた。しかし、ラドワンスカの深く糸を引くようなストロークは、徐々にシャラポワのミスを誘い始める。シャラポワのセカンドサーブに対し、リターンで動き回り、ダブルフォールトを誘う仕草を見せる。2万人の大観衆の前で、ジュニア選手が元女王を翻弄していた。とても4大大会に6度しか出場していない18歳には見えなかった。

 今年の全米で、女子に新世代の波が押し寄せている。ラドワンスカに加え、4回戦には5人の10代選手が名前を連ねた。アグネス・サバイ(ハンガリー)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)はラドワンスカと同じ18歳。タミラ・パシェク(オーストリア)は、まだ16歳だ。国際テニス連盟の主催するジュニア世界ツアーで活躍し、この2年で一般に移行してきた選手たちだ。日本の次代を担う森田あゆみと同年代で、ジュニアツアーでは勝ったり負けたりの間柄だった。しかし、ライバルたちは、あっという間に一般でも活躍の場を広げた。

 現在のテニスは、早い展開での攻撃が特徴だ。どんな状態からでも攻撃に転じ、自らポイントを奪いに行く。攻撃の手を休めないシャラポワが、その典型だ。しかし、新世代の選手たちは、その攻撃をいとも簡単に守りきる技術を身につけ台頭してきた。自分から攻撃もでき、相手の攻めを鉄壁の守備でかわす。ジュニア時代から多くの経験を積むことで、多彩な攻めへの読みと、動じないメンタルを養ってきた。低年齢化で、ジュニアと一般の境目がなくなってきたため、どの年代にもトップと同じ高い能力が求められる。見た目には派手さはない新世代だが、計り知れない才能を秘め、これからの女子テニスを変えようとしている。

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