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「夏」が「冬」を変える。大菅小百合の挑戦。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

PROFILE

posted2004/12/28 00:00

 アテネ五輪で自転車競技に出場した大菅小百合(三協精機)が、本職のスピードスケートでも活躍している。'04 ―'05シーズンのW杯短距離開幕戦となった長野大会(12月4、5日)女子500mでは38秒13の国内最高記録をマークし、'02年12月の長野大会以来、2年ぶり2度目のW杯優勝を飾った。「正直、今季は間に合わないと思っていた」という大菅は喜びのあまり観客に向かって投げキスまでサービス。翌週の中国ハルビン大会でも初日に38秒87を出して3位に食い込むなど、ブランクを感じさせない滑りで周囲を安心させた。

 日本人4人目となる夏冬両五輪出場を果たした大菅は8月末に帰国し、2週間ほど休養したあと9月中旬からスケートの練習を再開した。スケート選手にとって夏場の自転車練習は恒例だが、本来なら並行して行うはずのローラースケートやスケート用の筋力トレーニングはまったく行っておらず、わずか2カ月半の準備期間では間に合わないだろうというのが大方の予想だった。それを見事に覆して表彰台の真ん中に立つことができた理由を、大菅は「たくさんの国際大会を経験したことで精神的に成長した」と自ら分析した。

 大菅には'02年のソルトレークシティー五輪での苦い思い出がある。メダルを狙っていた女子500mの1回目で8位と出遅れ、2回目もスタート直後にバランスを崩し、総合12位と惨敗した。精神面での弱さを痛感した大菅は、4年後のトリノを目指す過程で異種競技の自転車を取り入れた。

 スケートと自転車は筋力強化の面で確かに共通点もあるが、専門的に見れば異なる部分の方がはるかに多い。技術的、体力的には自転車をやるメリットはほとんどないが、まったく知らない世界に一人で飛び込み、W杯や世界選手権、そして夏の五輪を経験したことは決して無駄ではなかった。いつもなら試合前に緊張する大菅だが、今回の長野では、「あまり緊張しなかった」と振り返った通り、平常心で滑ることができた。ハルビンでも「気負わずリラックスして滑れた」レースで3位となった。

 トリノ五輪まで残り1年余り。異種競技の自転車で得た経験をトリノへとつなげられるか。2005年は大菅にとって大事な1年となりそうだ。

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