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復活の本場所にいた、2人の朝青龍。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2008/02/14 00:00

 平成20年の幕開けとなる初場所。注目は、もちろん2場所連続出場停止明けの朝青龍だ。復活を期しての15日間の激闘は、見応え充分だった。そこには、2人の朝青龍が存在した。

 場所前の準備期間は、約40日間。調整はおおむね順調で、稽古総見でも白鵬を圧倒。自信満々で初日に臨んだ朝青龍だった。しかし本場所の土俵に潜む魔物が、その手足に絡みついた。踏み込みの甘い、中途半端な浮ついた軽い相撲の連続。「稽古場と本場所の相撲は別物」と言われ、稽古場の力を本場所で出せない力士が多い中、朝青龍はこれまで本場所で、逆に稽古場以上の力を発揮してきた。重圧をパワーに変える先天的技術を身につけていると思っていたが、間違いだった。相撲人生最大の重圧の中では、朝青龍も他の力士同様にもがき苦しんだのだ。場所前の精彩と安定感は消えていた。

 一歩間違えば大崩れしかねない瀬戸際で朝青龍を支えたのは、桁違いの地力と勝負への執着心だった。2日目の稀勢の里戦で完敗し、ライバルの白鵬が完璧な相撲内容で白星を重ねる姿を目の当たりにしながら1差追走。ふがいない大関陣が早々と総崩れした中、本調子にはほど遠い相撲ながら、耐えに耐えた。

 10日目、見上げる土俵上で白鵬に土。この瞬間、朝青龍の戦闘モードが劇的に切り替わった。「負けられない相撲」から「勝ちきる相撲」へシフトチェンジしたのだ。立ち合いの踏み込み鋭く、常に圧力をかけながら、相手によって突き、押し、寄り、足の指が土俵の土をかんで、地に足のついた横綱相撲をみせた。終盤、元気のなかった大関戦が続いたとはいえ、力の差は歴然。本来の姿を取り戻して千秋楽を迎えたことで、綱の責任は見事に果たしていた。

 クライマックスは千秋楽、実に5年4カ月ぶりの横綱同士の相星決戦。懸賞はなんと48本。異様な雰囲気の中、手に汗握る力相撲となった。右四つがっぷりの体勢から、朝青龍の吊りをしのいだ白鵬が、渾身の力を込めた左上手投げ。朝青龍は土俵中央で裏返しにされた。この瞬間、白鵬の3場所連続6度目の優勝が決まった。

 復活優勝こそ逃したものの、その存在感の大きさを知らしめた朝青龍。絵になる横綱が帰ってきた。

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