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日本人はどこにいる?PVで見たW杯。 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byTakashi Yuge

posted2006/08/03 00:00

日本人はどこにいる?PVで見たW杯。<Number Web> photograph by Takashi Yuge

 イタリアの優勝で幕を閉じたサッカーW杯。ベッケンバウアー大会組織委員長が大会前に「もう一つのW杯」と言ったのは、ドイツ国内数万カ所にも及ぶパブリック・ビューイング(以下PV)だった。観戦は無料。あらゆる町の広場がPVとなり、千を越える教会にも試合を楽しむためTVやスクリーンが設置されたという。首都ベルリンから牧草と牛の香り漂う名もない村まで、4500kmばかり車で走ってあちこちのPVを見てきた。

 クロアチアのベース地バート・ブリュッケナウは深い森の中にあった。午睡の時間帯、静まり返った会場のスクリーンには、アルゼンチンの6点目をぶち込んだメッシ。たった5人きりの観衆のガキどもが、ボールを追う足を止めて、口をあんぐりさせていた。

 ベルリンの「6月17日通り」。1km超の歩行者天国には巨大スクリーンがブランデンブルク門に連なり、そこには各国代表ユニフォームの花がビールの匂いとともに幾万も咲いた。ブラジル人は時を選ばずサンバを踊り、イングランド人はひたすら飲む。そして何かを投げる。数は少なかったが中南米系もアフリカ系も存在感を放っていた。彼らは試合のチケットなしでドイツまで来て、それでも「W杯」というイベントを体いっぱいで楽しんでいた。

 ニュルンベルクでのクロアチア戦前夜、市場広場で白赤チェック姿の男3人組に呼び止められた。「すまない、明日は勝たせてもらう」「そりゃこっちの台詞だ」互いに笑顔でやりあった後、ふと思った。

 3万人ともいわれた日本人は一体どこにいるのか、と。確かに日本戦のあった街やボンにその姿はあった。だがオーストラリアやクロアチアの人間に自ら話しかける覇気やブラジル人と踊る、などという度量は日本代表と同じようにファンにもなかった。PV会場の中でも、日本人は“お客さん”だった。

 多くの日本人にとってW杯とはまだまだ「チケットありき」なのではないか。

 「イベントそのものを楽しむ感覚」が足りないのではないか。ジーコは「主役になれ」と言い続けた。もしかしたら4年後に向けて問われているのは、ファン一人ひとりが現地でW杯を楽しむその姿勢なのかもしれない。

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