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試練を越えての大関、琴光喜の今後の課題。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2007/08/09 00:00

 稽古場横綱の汚名を返上した。稽古場では大関陣を相手に無類の強さを発揮するが、本土俵では考えすぎてずっと関脇止まり。もはや大関の地位に見放されたと思われていた琴光喜が、地元名古屋の大観衆に後押しされ、やっと本来の地力を発揮した。千秋楽まで朝青龍と優勝を争い、最後に力尽きたものの、横綱1人を倒して13勝。過去3場所通算35勝を挙げ、文句なしで大関昇進を決めた。年6場所制となってから、最高齢の31歳3カ月で昇進。一昨年の11月に定年退職した先代の佐渡ヶ嶽親方は、現役時代のしこ名「琴櫻」を譲りたいとラブコールを送った。親方も横綱昇進最高齢記録保持者(32歳1カ月)ゆえ、琴光喜の姿と昔の自分の姿が重なったに違いない。

 今場所の快進撃の中、琴光喜が土俵上で見せたガッツポーズは2回。この2番が大関獲りのキーポイントだった。

 1度目は初日。怪我で低迷していたが、久々に上位に戻ってきた若の里戦。大関候補として期待され、鎬を削ったかつてのライバルとの一番だ。立合い、琴光喜は強烈な体当たり。土俵際まで若の里を吹っ飛ばしたが攻めきれず、回り込まれて形勢が逆転。力の出る両まわしを取られ、右手一本を残す絶体絶命の形となった。いつもなら半身で守勢に回る琴光喜だが、間髪入れずに攻めに転じた。右からすくい、掛け投げで崩す。と同時に前に出て右手を返し寄り倒し、攻める意志を貫いた勝利だった。

 2度目は10日目、新横綱白鵬との全勝対決だ。新横綱の重圧の中、本来の力強さはないものの、広い懐で負けない相撲を続ける白鵬を、どう攻めきるか。仕切りから気迫を全面に押しだし、鬼の形相で睨みつける琴光喜は、立合い、少し変わり気味に左上手を取り、主導権を獲る。白鵬の圧力を受けきると、体を充分に開いて絶妙のタイミングの上手出し投げ。白鵬に全く反撃の間を与えぬ完勝劇だった。気迫と技のさえで掴んだ勝利が、大関という夢を現実に引き寄せた。

 あごの骨折や両ひじの手術など、苦難を乗り越えて得た大関の座である。手放しの賛辞を送りたいところだが、26連敗中だった朝青龍には今場所も完敗し、優勝を意識した最終盤では弱気の虫も垣間見せた。克服すべき課題は明確だ。祝福とともに、さらなる精進を期待したい。

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