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見どころ満載の春場所。なかでも注目は白鵬だ。 

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服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2006/03/23 00:00

 停滞ムードが一掃され、急激な変革モードへの突入を予感させた初場所。新大関“琴欧州”効果は、明らかにプラスの波を発生させた。この波がうねりを伴う大波へと変わるのか。それが春場所で最も注目すべきポイントだ。

 栃東の綱取り、白鵬の大関取りに加え、朝青龍・琴欧州の巻き返し、千代大海・魁皇の史上最多9度目のかど番脱出なるか等々、話題は盛り沢山。変革の色がより鮮明となるためにも、是非とも昇進絡みの結果が望ましいが、正直予想は甚だ難しい。どの話題をとってもハードルは高い。しかし、その中で、私が最も成就の確率が高いと計算するのが、関脇・白鵬の大関取りである。

 昨年の春場所に続く2度目の挑戦。初挑戦は初日からの3連敗で自滅、やっと勝ち越したが勢いは消え、7月場所は怪我で途中休場、撤退を余儀なくされた。

 日の出の勢いで出世街道をばく進し、横綱まで一気に駆け上がるといわれた男が、角界で初めて挫折を味わった。

 モンゴル相撲の英雄を父に持つ超サラブレッドの白鵬だが、来日時の体重は僅か68kg。入門先が決まらず、最後の最後にお情けで部屋が決まった話は今では語り草になっているが、白鵬の急成長にはたびたび驚かされた。「よく食べ、よく寝、よく稽古」。ひたすら相撲界の鉄則を貫き通した白鵬は、僅か3年で大化けした。何と体重は2倍以上になり、天性の「柔」を武器に、負けない相撲を作り上げた。しかし、この相撲には落とし穴が隠されていた。20歳の若者らしい荒々しさや激しさの欠落、それは、上を目指す者にとって致命的な問題だった。

 挫折の中、試行錯誤の稽古で求め続けた「剛」の要素。琴欧州に先を越された悔しさが、心技体に火を点けた。受ける立合いから、攻める立合いへ。張り手や変化などの小細工を封印し、正攻法へ。相手の力を吸収する相撲から、相手を破壊する相撲へ。先場所、終盤の優勝争いの重圧の中で朝青龍を力でねじ伏せ、琴欧州を圧倒した白鵬。そこには、凄みを漂わせた全く別の白鵬がいた。初優勝こそ逸したものの、終盤の安定感は栃東をも凌ぐものだった。

 昇進確定の目安は12勝。白鵬という荒波に飲み込まれるベテランたちの命運は……そっちのほうが心配な私である。

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