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場所中止でも震災後でも。
鳴戸部屋の猛稽古は続く。
~逆風はね返す「おしん横綱」の檄~ 

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佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byShoko Sato

posted2011/04/11 06:00

場所中止でも震災後でも。鳴戸部屋の猛稽古は続く。~逆風はね返す「おしん横綱」の檄~<Number Web> photograph by Shoko Sato

 相撲界の八百長疑惑問題など吹き飛んでしまう大惨事が起きてしまった。親戚や知人が被災した力士もおり、地震直後の数日は、稽古自体を中止したり、余震に備えて稽古時間を短縮するなど、各部屋は対策に追われていた。

 もっとも、力士数の減少もあり、かつては猛稽古で知られた名門部屋でも、3、4時間で終了してしまうのが、昨今の相撲界稽古事情。そんな風潮に真っ向から逆らって、気合十分の猛稽古を続けているのが、「おしん横綱」元隆の里を師匠とする鳴戸部屋だ。今なお稽古時間は朝5時から昼の12時まで、7時間以上ぶっ続けで行なわれている。

 春場所が開催されず、稽古に励むモチベーションが保てずに、合同稽古や出稽古でマンネリを打破している部屋や力士も多い。そんな中、稀勢の里を部屋頭とする鳴戸部屋では、もともと「出稽古禁止」。師匠の方針で、あくまでも自分たちの部屋での濃密な稽古にこだわっている。

三役力士の稀勢の里も新弟子のように泥だらけに。

 部屋の注目株は、入門11年目、欧州出身力士の先駆者の一人で、チェコを母国とする隆の山だ。幕下上位に定着し、「幻の春場所」の順席(番付)では幕下二枚目の地位で、「相撲人生を賭けるはずの場所だった」と鳴戸親方は言う。

「昨年九月場所後あたりから、体も大きくなってきた。幕下に慣れてきたということです。今の彼は、そこらの十両より強い。この時期に徹底的に稽古し、満を持して次の場所を迎えられるでしょう」

 100kgそこそこの細身ながら、バランスよく鍛えられた筋肉を武器に、足腰のバネとスピードが身上だ。「初の平成生まれ関取」として話題になった十両の高安を相手に、互角以上に戦い、ときに稀勢の里をも転がすほどなのだ。

 三役力士の稀勢の里も新弟子のように泥だらけになり、体から湯気を立て、ゼイゼイと息を上げる猛稽古。さらに師匠の檄が飛ぶ。「苦しい時こそ、苦しい顔を見せないものだ! そこをかみ殺すんだ!」。稀勢の里の出身地である茨城県も震災被害は少なくない。

「もちろん茨城も心配ですけど、東北のほうが大変ですから。自分たちは今、やることをやるしかないんで」

 稽古後。2場所連続で白鵬を下したあの時と、なんら変わらぬポーカーフェイスで、稀勢の里は力強く言い切っていた。

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