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角界の有望新人諸君へ。負けて当然、焦りは禁物。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2005/03/17 00:00

 打倒朝青龍! 目指すは横綱! 大いなる野望に胸躍らせ、初場所から春場所にかけて、多くの若者たちが相撲界の門を叩いた。角界への入門はいつでも可能だが、学校の卒業シーズンと重なる春場所は、入門者数も断トツで別名“就職場所”とも呼ばれている。注目は大学や高校相撲で活躍した関取予備軍だ。数年前、幕下付け出し資格が厳格化し、今回幕下15枚目格付け出し特権が認められたのは、昨年学生横綱に輝いた近大出身の吐合のみ。その他全ては前相撲からスタートという茨の道を歩む。しかし、そこから抜け出しそうな有望新人も目白押しなのだ。中でも境川部屋に入門した澤井豪太郎は大物と呼び声高い。高校卒業前に一足早く初場所初土俵。出世披露も果たし、早くも春場所の番付表(序ノ口)に四股名が載った。

 小学校3年生から相撲を始め、5年生ではわんぱく相撲の横綱。中学時代こそ伸び悩み、やや低迷したが、故郷の大阪・寝屋川を離れ名門埼玉栄高校に相撲留学して以降、一気に素質が開花した。左前みつ右差しの速攻という型を持ち、ここ一番の勝負強さは高校横綱をはじめ、名だたるタイトルを総なめにしたことからも折り紙つきだ。幕下付け出し資格の唯一かかった全日本選手権(優勝者のみ資格獲得)では惜しくも3位に甘んじたが、学生横綱の吐合戦では2戦2勝。相撲の地力・将来性という点では群を抜く。「目標とする力士はいません。目標とされる力士になりたい」と自信満々で語る澤井には、高校の猛練習で作り上げた自信という幹を、大相撲の猛稽古により太く揺るぎ無い大木へとして欲しい。

 だが、相撲道を究める道のりは、決して平坦ではない。

 22年前、今の澤井以上に騒がれ、鳴り物入りでデビューした私は、スタートでつまずいた。周囲の過剰な期待という重圧を受け、自分を見失い、後先顧みない猛稽古で心身共に疲弊させ、持病の腰痛を再発させてしまった。そのため最後まで満足な稽古が出来なかったのだ。大切なのは、まず地に足をつけた身体づくり。怪我に強い野武士のような逞しい土台が無ければ、プロの稽古には到底耐えられない。アマの身体、相撲がそのまま通用するほど、プロの世界は決して甘くはない。負けて当然、焦りは禁物。有望新人諸君には、私の二の舞だけは踏んで欲しくないのだ。

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