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今敢えてサッカーをスローに愉しむ提案。 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byNaoya Sanuki

posted2004/07/01 00:00

今敢えてサッカーをスローに愉しむ提案。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 チャンピオンズリーグ決勝、日本代表のイングランド遠征、W杯1次予選の対インド戦。そして現在進行形のユーロ2004が終われば、アジア杯が始まり、それが終わるとアテネ五輪……。目の前のテーブルには、新たなご馳走が、次々と運ばれてくる仕組みだ。

 和食もあれば、洋食もある。中華もあれば、カレーもある。色とりどりだし、賑やかだし、人を飽きさせない魅力がある。それこそが、サッカーの魅力。僕はそう信じて止(注ルビ―や)まないし、それが長年お付き合いしてきた一番の理由だが、最近は慌ただしさを覚えることも事実。前の品を食べ終えるやいなや「さあ次は……」と急(注ルビ−せ)かされると、もう少し余韻を楽しませて下さいよと、次なるメニューの登場に“待った”をかけたい気分になる。

 ユーロ2004は面白いぜ!と、さんざん叫んでおきながら、何いってんだお前は、と突っ込みを食いそうだが、それはそれ、これはこれだ。ユーロ2004は実際とても面白い。抜群の味を出している。問題視するべきは、その中身がキチンと検証されにくい諸々の体質だ。大会後、世の中の関心は、次なるメニューのアジア杯へさっさと移るだろう。それが終われば、即アテネと言い出すだろう。それぞれの前と後のバランスは決して良い関係にない。前は重く、後は軽い。騒ぐわりに、魅力は正確に伝えられていない。

 シドニー五輪が最たる例だ。準々決勝でアメリカにPK負けを喫すると、一転して沈黙。翌朝、高橋尚子がマラソンで金を獲得するや、サッカーの話題は雲散霧消。気がつけば「さあ次は2002年!」と、チャンネルは勝手に切り替わっていた。2002年W杯もしかり。「次期代表監督にジーコ内定」の報道が席巻したのは、大会の余韻に浸る間もない決勝の3日後。最近で言えば、チャンピオンズリーグだ。強豪が次々と姿を消せば「番狂わせ」という一言をもって強引に片付け、それが整理されぬままにイングランド遠征、ユーロ2004へと話題は移行していった。

 目先のイベントを食い潰すかのようにして、次なるメニューへと向かう現在のあり方に疑問を抱くのは僕だけではないはずだ。サッカーはファストフードではない。ユーロ2004に代表されるその絶妙な味わいは、スローペースでじっくり噛みしめたい。

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