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43歳で世界ランク1位。山本博の向上心。 

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藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

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posted2006/08/17 00:00

 国際アーチェリー連盟の世界ランキングで、アテネ五輪銀メダリストの山本博(日体大教)が日本人として初めて1位になった。アーチェリーの世界ランク制度は'96年から始まり、五輪や世界選手権、W杯の成績に応じて与えられるポイントで順位を決める。ただし連盟の発表は不定期で、そのため今回も実際には6月11日付で1位になっていたにもかかわらず、全日本連盟を通じて山本本人に伝えられたのは7月19日だった。

 山本はさっそく「安定した成績が求められるランキングの1位になれて、本当にうれしい。これを励みに、今後は世界ナンバーワンとしての自覚を持ってプレーに臨みたい」と喜びを表明した。

 '84年のロサンゼルス五輪で銅メダルに輝き、20年後のアテネ五輪で銀メダルを獲得。41歳での復活劇は、テレビや新聞、雑誌で大きく取り上げられた。今年4月には、大宮開成高の教員から日体大の助教授に転身。練習時間減少の影響もあり、7月初めに行われたアジア大会(12月・ドーハ)代表最終選考会ではまさかの5位に終わり、上位4人に与えられる出場権を逃した。それでも競技に対する情熱は少しも衰えず「来年は世界選手権もあるし、早く準備に取りかかれると思えば」と笑顔で話す。一人で黙々と標的に向かって矢を射続けるアーチェリーでは、失敗を次に引きずらない、素早い気分転換が必要不可欠だ。山本の最大の武器であるプラス思考は、今でもまったく変わっていない。

 惨敗に終わった今年2月のトリノ冬季五輪後、日本オリンピック委員会内部では「4回も5回もオリンピックに出てもちっとも自慢にはならない。出てもメダルが獲れなければ何の価値もない」という強硬意見が噴出したが、山本のように20年もたってから再び表彰台に上がる選手もいるのだから、五輪に数回出ることは決して無意味ではないだろう。大事なことは、出場するだけで満足するのではなく、いつになってもメダルを狙う気持ちを失わないことだ。43歳にして世界の頂点に上り詰めた今回の快挙は、山本の飽くなき向上心を如実に証明した。

 45歳で迎える北京五輪でも、この気持ちさえあれば再び表彰台、それも真ん中の一番高いところに立つことも決して夢ではないに違いない。

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