SCORE CARDBACK NUMBER

「ソイヤッ!」に重なる
斎藤隆の実直な想い。
~ボストンに流れる一世風靡セピア~ 

text by

津川晋一

津川晋一Shinichi Tsugawa

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2009/06/15 12:00

「ソイヤッ!」に重なる斎藤隆の実直な想い。~ボストンに流れる一世風靡セピア~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

プロ初勝利は'93年4月29日の巨人戦だった。足かけ17年の大記録達成となった

 一世風靡セピアの『前略、道の上より』が、5月からフェンウェイ・パークで流れている。20年以上も前のヒット曲を背に登板するのはレッドソックスの斎藤隆だ。「小さいころ竹の子族には憧れなかったけど、一世風靡セピアには憧れてました。ホント、不良とは一線を画した格好良さがありましたよね」

 ドジャース時代にも一時使用したが、「日本らしい曲だから」とボストンでも再び起用することにした。

斉藤の謙虚な姿勢がボストン救援陣を支える。

 ア・リーグ東地区で今年も熾烈な首位争いを演じているレッドソックス。先発投手陣の防御率がリーグ12位と苦戦している一方で、救援陣がリーグトップの防御率3.03(5月25日現在)で牽引している。なかでも斎藤は、セットアップからクローザーまでフル回転の活躍だ。

「勝っている時はそのままチームをいい波に乗せられるように、負けていても無失点で抑えて逆転できるように。どんな場面であろうと最少失点で切り抜けるのが仕事だと思っています」と、昨年までのドジャースでの守護神とは違うタフな役回りを謙虚に担っている。

偉業達成の名誉にも惑わされず。

 その斎藤に大きな節目が訪れた。日米通算100勝&100セーブ。あと1勝と迫っていた6月11日、地元でのヤンキース戦で2点ビハインドの7回2死二塁でマウンドに上がり、味方の逆転劇で今季初勝利を挙げたのだ。現役メジャー選手で100勝&100セーブを記録しているのはジョン・スモルツとトム・ゴードンのただ2人。日米通算ではあるが、日本人メジャーリーガーとして初めてその金字塔に打ちたてたのだった。

 実は斎藤は、この数字には色気を示してはいなかった。「100という数字にこだわると、勝ちにこだわることになってしまう。今年1年、仮に勝ちが全くつかなくても構わないと思っています。ブルペンではまだまだ信頼を築き上げる段階。与えられた役割をキッチリやっていきたい」と達成前には謙虚な姿勢を崩さなかった。あくまで自らに与えられた役割を全うする。そんな斎藤だからこそ、野球の神様はご褒美を与えたのかもしれない。

『前略、道の上より』には「ソイヤッ!」という有名な掛け声がある。正確には「素意や」と書くが、この言葉には「かねてからの考えや想い」という意味がある。自らの信念を曲に重ねているのかと思いきや「あ~そうなんですか! そんな深い意味があるなんて全然知らなかったです。それ聞いて逆にすごくよかった(笑)」と、意外にも肩透かしを食らってしまった。

今も昔も変わらぬ斎藤の“ソイ(素意)ヤッ!”。

 だが、かつて“一度でいいからメジャーのマウンドに立ちたい”と海を渡った斎藤の実直な想いは今も変わらない。100勝&100セーブに先立って、6月5日のレンジャーズ戦ではメジャー200試合登板を達成。「本当ですか。一度だけでも(メジャーの)マウンドに上がれたらと思って来て、200なんて聞くと長くやれているんだなあと思う。また頑張ります」と改めて“素意”を口にしたという。そして100勝&100セーブを達成した翌日の6月12日には、フィリーズ戦でも延長12回1死一塁から登板して今季2勝目をマーク。日本人投手では史上初となる2日連続勝利で、“日本人投手初”という嬉しい出来事が2日続いた。10試合連続無失点で防御率も2.45にまで向上し、ますますピッチングも冴え渡っている。

 斎藤隆、39歳。今この瞬間を大切にする“素意”を胸に秘め、これからもメジャーでの果てしなき道程を、一歩、そしてまた一歩しっかりと踏みしめて行く。

■関連リンク► 岩村明憲が愛する日本野球と演歌の心。
► 続・斎藤隆インタビュー「ドジャースの幸せな1年」

関連キーワード
斎藤隆
ボストン・レッドソックス

ページトップ