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万全の対策で得た、
女子レスリングの強さ。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

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photograph byKeijiro Kai

posted2006/10/26 00:00

万全の対策で得た、女子レスリングの強さ。<Number Web> photograph by Keijiro Kai

 中国の広州で行われていたレスリングの世界選手権で、日本の女子が7階級すべてでメダルを手にした。五輪種目の4階級でも、48kg級の伊調千春(綜合警備保障)、55kg級の吉田沙保里(同)、63kg級の伊調馨(中京女大)が金メダル。72kg級の浜口京子(ジャパンビバレッジ)も銀メダルを死守した。'04年のアテネ五輪後、外国勢の追い上げで今後は苦戦になると日本の首脳陣は予想していた。さらにルールが2分3ピリオドに変わり、じっくり攻めるタイプの多い日本選手には不利という声もあった。だが結果は、文句なしの圧勝。あらためて、日本の底力を世界に見せつけたといえる。

 勝因は、首脳陣と選手の研究熱心さに尽きる。栄監督ら首脳陣はいち早く新ルールに対応し、選手全員により攻撃的なレスリングを徹底させた。選手も現状に満足することなく、常に外国勢の一歩先を行く戦術を編み出した。いい例が55kg級の吉田だ。アテネでは得意のタックルを連発して金メダルをもぎ取ったが、当然、外国勢は吉田の武器を分析して対策を立ててきた。

 今大会でも、1回戦と準決勝ではタックルに行ったところを抱えられ、逆に投げられるシーンもあった。だが、吉田は少しも慌てなかった。タックルが研究されていることは最初から想定ずみだったからだ。タックルが使えなくなることを事前に予測して、昨年からは上半身を強化、組み手を厳しくすることで相手を引き込む技術を磨いてきた。それがヤホラワ(ベラルーシ)との決勝戦で生きた。'96年から続く国際大会の連勝記録「101」は、吉田がいまだに進化していることの証でもある。

 アテネに続き、今回もまた金に手が届かなかった浜口も、決して進化していないわけではない。28歳になった今季は、よりスタミナを強化しようと練習量を増やし、スピードをつけるために倒れるまで走り込みを続けた。欧州王者ズラテバとの決勝戦は鼻骨骨折などもあって内容的には完敗だったが、浜口自身は間違いなくレベルアップしていた。

 北京五輪まであと2年。日本勢の不断の努力が続く限り、金メダル量産は間違いない。だが、一時でも進化が止まればたちまち外国勢に追い抜かれる。最後に笑うのは誰か。北京を見据えての戦いはまだまだ続く。

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