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生涯現役を貫く69歳、杉原輝雄の生き様を知れ。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

PROFILE

posted2006/08/03 00:00

 69歳の杉原輝雄が元気だ。

 プロゴルフでは、50歳を過ぎるとシニアツアー(米国ではチャンピオンズツアー)という別のフィールドの大会が用意されている。だが69歳の杉原は、自分の息子よりも若い選手たちに混じって、レギュラーツアーで今も奮闘中だ。

 '98年、杉原は前立腺がんと診断された。

 「60歳を超えた私には、休んでいる暇はない。50歳なら手術をして1年間休んで、また試合に出るという選択肢もあっただろうけど……」

 杉原は手術をせずに治療を重ね、さらにこのときから過酷な加圧式トレーニングを始めた。自分がピンチのときに、さらに自分を追い詰めて乗り越える。実に杉原らしい生き方だと思う。

 伝説的なエピソードはいくつもある。

 真夏の最も暑い時間帯に、ゴルフ場で最も暑く、風も通らないホールへ行って打球練習をする。寒い冬も同じで、いつも最悪の条件で練習をする。

 誰もいなくなった練習場にキャディを座らせ、その手前に向けてボールを打つ。アプローチの話ではない。キャディがいるのは杉原から200ヤード以上先。ドライバーやフェアウェイウッドで打ったボールを、キャディは座ったまま手を差し伸べれば拾えた──つまり、それだけ杉原のボールは曲がらなかったのだ。

 この話は中部銀次郎さん(故人)から聞いた。中部さんは生涯アマチュアを貫きながら、プロトーナメントで優勝した実績を持つ、これまた伝説的な人物。その中部さんに「なぜプロにならなかったのか」と聞いたとき、返ってきた理由のひとつが、杉原の練習を見て「プロの生き方にショックを受けたから」だった。

 「職人芸」というに相応しい技術があるからこそ、69歳の杉原は今も現役でいられる。飛距離が最優先される今のトーナメントでは、杉原はドライバーで若い選手に60〜80ヤードは置いていかれるはずだ。だが、その差をカバーできるだけの技術が杉原にはあるわけだ。

 僕は杉原に戦い続ける訳を訊ねたことがある。

 「金が欲しいんや」

 まるで子供のような笑顔でそう答えた。金を理由に挙げたのはもちろん照れ隠しだろう。70歳を目前にしてなお、勝利への貪欲な姿勢が杉原からは消えていない。

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