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いま実を結びはじめた、協会の地道な強化。 

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吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

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posted2005/12/22 00:00

 森田あゆみが、全日本テニス選手権の頂点に立った。15歳8カ月は、'83年雉子牟田明子の15歳4カ月、'88年沢松奈生子の15歳6カ月に次ぐ史上3番目の若さでの快挙だった。昨年、初出場で'79年オープン化以来最年少ベスト8をマーク。わずか2回目の出場で、一気に優勝へひた走った。確かに、杉山愛、浅越しのぶらのトップ選手は欠場している。国際大会のレベルに照らし合わせてみれば、WTAツアー下部大会のチャレンジャーと同等だった。森田は、すでにチャレンジャーで1度の準優勝を経験していることから、全日本での優勝は驚く結果ではないのかもしれない。しかし、日本選手同士の戦いでかかる重圧と、注目度の高さは、チャレンジャーの比ではない。その中での優勝は評価に値した。

 '00年。伊達公子や沢松奈生子らが引退し、杉山だけが4大大会で孤軍奮闘する中、元日本女子代表コーチの丸山薫氏に「どうにかしろよ」と声を荒らげたことがある。丸山氏は「急がないでほしい。後5年待ってくれ」と答えた。その年、盛田正明氏が、日本テニス協会の会長に就任した。盛田会長は、ジュニア強化方針を打ち出し、私財でも「盛田正明テニス基金(MMTF)」を設立。有望なジュニアの海外テニス留学を支援してきた。森田も、その恩恵に与った1人である。この数年、森田に限らず、瀬間詠里花、奈良くるみ、錦織圭、会田翔ら、ジュニア選手が豊作なのも、この地道な努力が実ってきた証拠である。

 全日本と同時期に、上海でATPの最終戦マスターズカップが開催されていた。同じアジアで、それも同じ週開催に、日本テニス界の意識の低さを揶揄する声もある。もちろん、レベルは比べようもない。世界の頂上を、現実的に意識しているかと問われれば、答に窮するだろう。しかし、いくら机上の理想があっても、日本の現状を認識し、そこからスタートしなければ何も生まれないではないか。今年、ウィンブルドン本戦に日本女子は6人を送り込んだ。'98年の7人以来の多さだった。'96、'97年の最多9人には及ばないが、ゆっくりと上昇カーブを描いていることだけは確かだ。そして、森田ら若年層の急激な成長が、一般プロ選手の自覚を促し、後押ししていることも忘れてはならない。

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